特等添乗員αの難事件を読みました III~IV


特等添乗員αの難事件 III

特等添乗員αの難事件 IV

 万能鑑定士Qシリーズにも登場している、特等添乗員αこと浅倉絢奈を描いた、特等添乗員αの難事件のIII~IVが面白かったです。
 IIIは婚約者壱条那沖のスキャンダルに絢奈が立ち向かうというエピソードでした。
 ラテラル・シンキングという、ひらめきだったり思い込みの裏をかく思考法に長けた絢奈と、お堅い官僚である那沖というカップルが、とても魅力的でした。
ひらめきで得た答えというのは他人の同意が得づらいため、結果的に相手の意図を逆手にとって罠にはめるという絢奈立ち回りは、正に小悪魔という感じです。
 万能鑑定士Qシリーズ同様に、賢くなった気分になれる雑学がたくさんあり、思考の飛躍が可能となるヒントは抑えているという構成から、なるほど知恵がつくエピソードだなと思いました。
 IVは、電車から豪華客船まで0円旅行を実現してしまう謎の韓国人美女ミン・ミヨンと絢奈との対決に加え、那沖の婚約者と称する藍岐瑠華が登場します。
 絢奈同様にラテラル・シンキングに長けたミン・ミヨンが、無銭飲食・無賃乗車という一見セコく見えるの犯罪を繰り返す理由が分かったときにはうなりました。
瑠華と那沖の関係は、ロジカル・シンキング(論理的思考)でぐいぐい迫る瑠華(絢奈曰く、莉子の性悪版)と調整の人那沖の相性のためどんどん泥沼化しますが、瑠華が要所要所でバカだったのでまあやきもきするくらいで読み進められました。
 個人的には、決定的な直接対決はないもののミン・ミヨンと瑠華を比較しながら読むととても面白く、富める人間としての論理を積み上げている瑠華と、富や経済を敵であると水平思考で対決するミン・ミヨンの価値観の違いを意識すると、バランス良く物語が楽しめます。
 また、ミン・ミヨンが富める国の資本主義経済について憎悪を感じていたのに対して、最後に絢奈によって民主主義的な配慮に心動かされるシーンは感動的でした。