万能鑑定士Qの推理劇を読みましたI~II

 松岡圭祐によるライトノベル万能鑑定士Qの推理劇を読みました。
推理劇シリーズは全部で4冊からなり、時系列的には事件簿の続きになります。
事件簿シリーズが、いつまでも物語が続けられるような長期連載維持の物語だったのに対して、推理劇シリーズは少しずつ物語の終わりに向かう気配が出て来ます。
その象徴として、お互いを信頼し合う男女のバディだった、凜田莉子と小笠原悠斗の関係がどんどん恋人に近づいていきます。

 Iは短編集的な作品で万能鑑定士Qシリーズをこの作品で初めて読む人や、久しぶりに読む人に向けた作品だと思いました。
もちろん固有の盛り上がりもあり、宝石鑑定トーナメントに関しては相変わらず詐欺師との頭脳戦が見所でした。
またこの巻では、小笠原悠斗の好意が莉子に伝わらない描写が目立ち始め、逆に二人の関係が深まる気配を感じました。

 IIは莉子が万能鑑定士Qを閉店、オークションハウスに再就職するという物語が描かれていますが、単に思い切りが良いというものではなく、莉子の商才の乏しさや気持の弱さが描かれています。
そんな莉子の気持をゆさぶるような学生時代に恋心を抱いていた先輩とその子供が登場したり、犯罪者の切なさをこれまで以上に鋭く描いています。
莉子はこれまでのエピソードでやれば出来ることや、周りから絶対的な信頼を得ているからこそ、弱さだったり不憫な描写がむしろ彼女の魅力を引き立てているように感じました。