妖怪アパートの幽雅な日常1、2巻を読みました

 香月日輪によるライトノベル作品、妖怪アパートの幽雅な日常を読みました。
 主人公が高校入学と同時に始めた下宿先は、妖怪たちが暮らす妖怪アパートだったという物語ですが、コミカルタッチでアパートの住人や妖怪がフレンドリーで心温まる作品です。

 身近に頼れる人が居ない場所で始める一人暮らしの描写には、何だか懐かしい気持ちになりました。
妖怪アパートは、大正ロマン漂う建物で、水場トイレは共有食事は賄い付きという、一人暮らしの寂しさを感じた初期の頃密かに求めた環境でした。
そして食べ物の描写が素晴らしく、食事シーンの数行で一気に物語りに引き込まれました。
…しかし、そういう願望を叶えてくれるのが、人間ではなく妖怪というファンタジーであるという部分に、逆にリアリティを感じ社会に対するある種のメッセージを感じました。

 怪談奇談では、人間の歪んだ面を妖怪として描くものが主流ですが、この作品では社会の変化で失われた人間らしさを妖怪として描くことで、もしかしたら異常なのは人や社会の方なのではないかという風に考えさせられるあたりが好きです。