竜とそばかすの姫のラストシーンに思うこと(ネタバレアリ

竜とそばかすの姫の終盤、虐待を受ける恵とトモを救うために、高校生のすずが高知県から単身、恵とトモの暮らす東京まで向かうシーンがあり、この展開に多くのツッコミがあります。
ぼくも劇場で見た時に、正直「この点は批判する人多いだろうな」と思いましたが、自身の鑑賞方針として、「正しい解決方法の提案」として考えないと選択することで、作品に納得できました。(楽しめた…というのはやはり不謹慎ですね。)
この点に関しては、かなり厳しい批評も多く、また丁寧に考察している人に失礼なので、ぼくが「正しい解決方法の提案」として考えないという方針に切り替えた(切り替えられた)根拠を簡単にまとめたいです。

「正しくない」に怯まない

竜とそばかすの姫の随所に「正しくない」決断や行動を選択することに、怯まないあり方が描かれているように感じました。
加えて「正しさ」を後ろ盾にした人間の、無責任さ消極さ無関心な残酷さなどを、厳しく描いていたと感じます。
その結末で、主人公であるすずが信念に基づき「正しくない」手段を選んだことには、あまり違和感を覚えませんでした。

現実の深刻な問題であるからこそ荒唐無稽に

児童虐待は現実で、救われない人が沢山いて、対策や解決もケースバイケースの難しい問題なので、アニメ作品の中で中途半端にリアリティある解決は無責任になるため、安易にマネしたり語れない荒唐無稽とすら感じる解決方法を描いている点には、ある種の誠意を覚えます。

すずは母親と向き合っていたのではないか

すずが自己犠牲的で無謀な行動を決断したのは、同じような決断によってすずが幼い頃に亡くなった彼女の母親の生き方を肯定できたからだと思います。
すずや彼女の母親が決断した自己犠牲的な方法が本当に正しいのか?は分からないのですが、母親が我が子と過ごせる未来を捨てて行った行動を、娘であるすずが肯定的にとらえ真似たというのは感動します。
…それをすずの父親が理解し後押しするシーンは泣けました。
亡くなった妻のことを妻の面影のある(そのあり方も似た)娘と語らう父親の心境はどんなものだったのでしょうか。

素晴らしい考察は沢山あります

という案配に、「正しさ」を疑って考え、荒唐無稽であること受け入れて、数ある描写の中から自分好みの設定を当てはめれば、充分に楽しめました。
もちろん、気になったというものを気にするなというのも無茶な話ですが、この点は論理的な解説を重ねると、「現実の深刻な問題」として考えない物語の自由さが失われてしまうと感じ、なかなか上手く言葉に出来ません。
ぼくはそういうスタンスですが、論理的に辻褄を合わせていたり厳しく指摘した素晴らしい考察が沢山あるので、リンクを残しておきたいです。(更新していきたいなあ)

宇多丸、『竜とそばかすの姫』を語る!【映画評書き起こし 2021.7.30放送】

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