Kindle Unlimitedで、「medium 霊媒探偵城塚翡翠」(ネタバレ感想あり

Amazonによる、月額980円(税込)で和書12万冊が読み放題になるサービス、Kindle Unlimitedで、「medium 霊媒探偵城塚翡翠」が読めます

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medium 霊媒探偵城塚翡翠

medium 霊媒探偵城塚翡翠について

相沢沙呼によるミステリー作品で、第20回本格ミステリ大賞受賞、このミステリーがすごい!1位、本格ミステリ・ベスト10 1位、SRの会ミステリベスト10 1位、2019年ベストブック の五冠を獲得しています。

『medium 霊媒探偵城塚翡翠』(相沢 沙呼) 製品詳細 講談社BOOK倶楽部

既に素晴らしい考察がある

ミステリーや物語としての魅力に溢れており、その点については素晴らしい考察ページがありました。
…ぼくの感想もおおむね同じです。

小説『medium 霊媒探偵城塚翡翠』ネタバレ解説と感想!傑作だけど不満も|わかたけトピックス

城塚翡翠が魅力的

ピンポイントな感想を加えると、城塚翡翠がとても魅力的に感じたという点です。
翡翠は作中で三種類の側面が描かれます。

一つが「死者の言葉を伝えることができる霊媒」。
内気で口下手(論理的説明が苦手)で天然なお嬢様という性格で、犯罪の現場で、霊媒によって答は分かっても、証拠になりえず、説明下手も相まって他人に信じてもらえず無力感に傷つく可愛い女性です。
もう一つが「奇術師が演じるインチキ霊媒師」。
饒舌で論理的ではすっぱな性格で、真犯人を手玉に取ります。
最後が「裏切られ傷ついた普通の女性」。
最初の彼女と似た気配を演出していますが、やはり全くの別人と感じました。

ぼくは、一つ目の翡翠が好みで、答は分かっているがそれを上手く伝える手段が無い琥珀を、推理小説作家であり論理的解説が巧みな香月史郎が補うという描写に、推理小説の新しい視点であり、人同士のコミュニケーションとは?ということについても楽しく考えられました。

唐突な変化

しかし最終話『VS エリミネーター』で、翡翠はそれまでと全く異なる「奇術師が演じるインチキ霊媒師」としての人格を見せます。
一つ目の翡翠が好みではありましたが、エピソードを重ねる内にもしもシリーズ化して二人でいくつもの事件を解決したら飽きそう…みたいな予感はあり、何よりも最終話での最初のどんでん返しの影響もあって、読者への挑戦も無視して、一気読みしてしまいました。
挑戦しても多分解けなかったと思うし、スピード感に翻弄されてあたふたするのが楽しかったので、悔いは無いです(笑)

喪失感が城塚翡翠をより魅力的に印象づけた

騙された!と思いつつも満足を持って読み終えたのですが、しばらくすると「死者の言葉を伝えることができる霊媒」の翡翠というキャラクターが本当に居なくなってしまったという喪失感を覚えました。
物語に登場するキャラクターに没頭しすぎて、ハッピーエンドであっても作品が終わった瞬間にキャラクターとの別れが寂しくなる…というのは名作に時折ありますが、mediumではその寂しさを極端に強く感じました。

その理由は、「奇術師が演じるインチキ霊媒師」の翡翠が、「死者の言葉を伝えることができる霊媒」の翡翠を否定し、最後に登場した「裏切られ傷ついた普通の女性」の翡翠が少なからずダメージを受けている描写があったからだと思います。
「死者の言葉を伝えることができる霊媒」の翡翠は、犯人を欺く為に演じた嘘のキャラクターではありましたが、翡翠にとってこうなれたら良いという理想と憧れの生き方だったようにも見えます。
「奇術師が演じるインチキ霊媒師」によってその全てを否定しなくてはいけなくなった翡翠は不憫に思うし、彼女を裏切った犯人の罪深さが感じられます。
そういった複雑な感情が城塚翡翠をより魅力的に印象づけたのだと思います。
まあ、最初の翡翠が単純に好きで、読者として騙されて落ち込んでいる自分と、落ち込んでいる「裏切られ傷ついた普通の女性」である翡翠とが上手く重なったというのも大きいと思います。

続編はもう少し浸ってから

mediumには続編(invert 城塚翡翠倒叙集)がありますが、仮にそちらで城塚翡翠が「死者の言葉を伝えることができる霊媒」を演じたとしても読者には「奇術師が演じるインチキ霊媒師」に見えてしまい、好きだった「死者の言葉を伝えることができる霊媒」は失われてしまったのだと思います。
もちろん、そんな読者の感情を上手く使った新たな物語が描かれていると思うのですが、しばらくはmediumの寂しさに浸ってから、改めて読みたいと思います。

invert 城塚翡翠倒叙集

ミステリーとしても素晴らしいです

などと、翡翠が好きすぎて、勢いで書いてしまいましたが、本当に個人的な細かなピンポイントについての感想です。
作品全体としても素晴らしいミステリーで、謎に挑んでも、流れに任せて読み進んでもとても楽しめる作品で、お勧めです!