スピリットサークルを改めて振り返ってみて

 水上悟志によるファンタジーSFマンガ「スピリットサークル」を、久しぶりに振り返ってみると、改めてその面白さに気付かされます。
全体的な感想は、以前に書いたので、今回は好きなところだけに絞って語りたいです。

水上悟志によるスピリットサークルが面白かったです | Office NaKao

 改めて一番面白かったのが、平凡な中学生桶屋風太が転校生石神鉱子に命を狙われる理由への興味と、真相である「フルトゥナ」の描写でした。

 鉱子が風太を狙う理由は、風太が過去生…前世のようなもので、何らかの罪を犯しており、それが影響していることは早々に語られます。
 現世では平凡ながらとても善良な少年である風太を、頭が良く情に厚い鉱子が、そこまで必死に命を狙うということは、過去生の風太はよほど酷い存在だったのだろうと、想像が膨らんでいきます。

 風太はスピリットサークルという道具を使い、自身と鉱子の第二章~第七章までの過去生を見ていきますが、鉱子との関係は正直なところ「お互い様」な印象。
ドラマチックではあるものの、立場の違いやすれ違いによって人間であれば誰もがしてしまうような過ちが、丁寧に描かれています。
 同時に、風太と鉱子がお互いに惹かれ合う展開も描かれ、「何があればここまで二人の関係はこじれるんだ?」と疑問が深まり、風太の過去の悪事に対するハードルがどんどん上がっていきます。

スピリットサークル (5) (ヤングキングコミックス)

 そして風太が最後に見る、鉱子との因縁が生まれた過去生第一章「フルトゥナ」の人生。
このフルトゥナが、上がりまくったハードルを軽く超える滅茶苦茶に悪い奴で行った悪事もトンデモなもので、もはや鉱子の恨み以前に、人類のために倒すしかないような存在として描かれます。
 そんな悪役ながら、思考はある意味合理的論理的な人間で、これまでの物語に登場する謎を知的に明快に解説してくれる全知の存在でもあり、謎解きのキーマンとしては頼りになる存在です。
そして、水上悟志先生独特の、子どもにも伝わるようなやさしく丁寧で理解しやすい描かれ方から、憎めない気の毒で不憫な存在としての切なさもにじませています。
 ぼくは漫画作品に登場する、強烈に強くて悪い悪役というのが大好きで注目しているのですが、フルトゥナほどに見事な悪役は希有な存在だと思います。

 そして、フルトゥナがどういう存在なのかは、是非とも漫画で確認してみてください。
 マンガDX+で全話無料で見られるキャンペーン中らしいのですが、我が家だと上手く表示されませんでした。。。

スピリットサークル (1) (ヤングキングコミックス)

https://twitter.com/mangadx_plus/status/1769921741227274355