万能鑑定士Qの推理劇を読みましたIII~IV

 松岡圭祐によるライトノベル万能鑑定士Qの推理劇III~IVを読みました。
探偵譚という続きの作品が発売されるのですが、当時は推理劇シリーズでいったんの完結を感じさせる展開になっていました。

IIIは、実際には、足を洗い更正しようとする贋作師、錦織英樹が主人公という感じのエピソードでした。
贋作づくりを通してとはいえ、物を創作するときの試行錯誤や、達成感が気持良く描かれていたのが印象的です。
一方で、ルールを逆手に取ったいかにも水平思考な詐欺の手口との対比は、どこかクリエイターとプロデューサとの関係を暗示しているように感じました。

IVは、敵役は何度か名前があがっていたコピア、それに対して凜田莉子と小笠原悠斗が、浅倉絢奈や雨森華蓮と共闘するという盛り上がる展開でした。
ただ、万能鑑定士Qや特等添乗員αでは、詐欺師を賛辞しないための配慮がされており、今回のコピアに対しては特に徹底してるなと感じました。
また莉子というキャラクターも有能さを発揮するシーンよりも、気持の弱さだったり、過去に対する劣等感だったり、だらしなさみたいな、マイナス要素を見せるシーンほど可愛さが際立ち、いつも通りに肩の力を抜いて楽しめました。
もちろん、クライマックスに相応しい演出もあり、
「万能鑑定士Qの推理劇 5」でのリベンジを語るコピアに、莉子が「ない」と言い切るシーンや、
物語終盤でついに莉子が小笠原のことを「悠斗さん」と下の名前で呼ぶようになってから、物語のト書きもそれまで小笠原だったものが悠斗に変わっていた辺りにぐっと来ました。
個人的には、万能鑑定士Qシリーズをこの作品で完結と言われても、充分納得出来る素晴らしい最後だったと思います。