囮物語が面白かったです

囮物語 (講談社BOX)

 西尾維新によるライトノベル作品、化物語シリーズ10作目「囮物語」がとても面白かったです。
サブタイトルが、「なでこメデューサ」ということで千石撫子を語り部にした彼女が主役の物語となっています。

 阿良々木暦達が卒業を半年後に控えた10月31日からの千石撫子を描いており、シリーズ全体の収束を予想させる物語でした。

 撫子が内気で口べたな事から一見まじめそうだけど、実は不真面目で怠け者であるという設定はすでに描かれてましたが、今回はさらに露骨に描かれています。
 なでこスネークでは、手ブラブルマやスクール水着など体を晒して、今作では秘めた心中を丸裸にされ、その性格の代償が本当に厳しく描かれていて、なんか撫子って作中では常にいじめられているよなあと思いました。
西尾維新ってもしかしてドSなのでしょうか?

…この作品は大きな秘密のある作品なので、以下はネタバレありで書きます。


***以下ネタバレありです

 今回撫子は前髪を月火にばっさりと切られてしまい、可愛く困ったフリをすることで相手が許してくれていけど顔を見れば言うほどは困ってないことがばれるシーンでは、それまでに如何に彼女が人を操っていたのかが分かる一方、その同じ仕草に対して阿良々木が「迷惑そうにするんだよな」と誤解していたというのは、皮肉を越えて残酷だなと思いました。

 撫子に対して、神原や忍や戦場ヶ原は何度か「ラスボス」という言葉を使っていたのですが、それは「一途な恋心やアニメ時の人気の高さを受けてのジョークだろう」と思っていましたがそうではない事が分かり、決着は次巻以降に持ち越されます。
 …とはいえ、多くの伏線は回収されシリーズの醍醐味である、物語終盤のスピード感はこの巻でも楽しめたかなと思いました。

 セカンドシーズンに入ってからの大きな謎と言えば、傾物語から登場しはじめた忍野扇の存在で、扇だけに物語を煽りまくっているのが気になります。
そんな化物語セカンドシーズンも残り2冊となり、物語は収束に向かっていくのだろうなあと思っていたら、(あまり信用してはいけない)後書きに「サードシーズンも書くんだろうな」などと書かれていてビックリするやら嬉しいやら複雑です。