怒れない人

 ぼく自身、酒を呑めばくだを巻いて、やれあいつのあそこが気にいらねえとか、怒り(少なくとも不機嫌な感情)をぶちまけるのですが、怒りを他人に伝えられない人がいるようです。

 知り合いにその典型的なタイプが居て、いつもニコニコしているし、その笑顔にみんな癒されていて、かといって貧乏くじを引くわけでもなく、天然なノリで好きなことや好きな人と上手につきあい、人脈も広げていける…という、まあ酒を呑む度に他人の信頼を失い続けるぼくから見れば、とてつもなくうらやましい個性を持っています。

 その人と一度突っ込んだ話をしたときに、いつものニコニコした調子で、ある社会的な不平等について語り…それを是正するボランティア活動を始めたと言う話を聞いて、いやあ凄い人だなあ素晴らしいなあと伝えたのですが、何だか不満が残るとのこと。
 …じゃあってことでしばらく話を聞き、こちらは感想を言うみたいな事を繰り返す内に「(今回の場合、不平等な社会に)凄く怒ってる?」と聴いたところ「そう!凄く怒っているのです!」と、多少自分にビックリしつつもやっぱりいつもの人当たり良いニコニコした調子で答えました。

 その人にとって怒りって感情を人に伝えるのはセンスとして無いらしく、また怒りを伝えずに上手くやれるそうで(その技術はむしろ伝授して頂きたいです)、まあ怒る必要がそもそもないのですが、でも怒っていることが相手に伝わると、それはそれで嬉しい気持にはなるそうです。
 と言うことから、例えば自分は怒りに無縁と思う方ほど是非とも「もしかして自分怒ってないか?」と考えるのは良いのではと思いました。