傾物語が面白かったです(ネタバレアリ・長文です)

 西尾維新によるライトノベル作品、化物語シリーズ8冊目「傾物語」がとても面白かったです。
 セカンドシーズン第二作目でサブタイトルは「まよいキョンシー」、まよいというのは元地縛霊現浮幽霊のツインテール小学生「八九寺 真宵」のことで、表紙は振り返り誰かに別れを告げつつ交差点に向かい歩きはじめているような彼女の姿が描かれています。
 ちなみに、今回の傾物語というタイトルの由来は忍野忍の
「たったひとりの人間には世界を変えることは難しいが、世界を傾けるくらいなら、できなくはないのかもしれんのう」
という言葉から来ているっぽいです。
…以下、ネタバレアリで書き進めます。


 物語の冒頭、八九寺とそっくりなしゃべり方をする忍野扇という新たな登場人分について描かれています。
忍野という姓から考えて彼女は忍野に縛られた元霊的な存在なのか?
そんな予感を臭わせるエピソードからはじまります。
…以下、刀語のネタバレもあります。
 という風に引っ張りまくった八九寺の成仏とかを描いたのかというと、まったく無く、作中にて八九寺は「タイトルに冠されながら、まさか私にはお座敷がかからないとは」とまで語っています。そういう意味で、「刀語『薄刀・針』」くらいに突っ込み所に満ちた作品であったと感じました。
…とはいえ流石に八九寺が「薄刀・針の『錆 白兵』」くらいに蚊帳の外という訳ではなく、象徴的な描写ではありつつも物語のメインではありました。
 そんな今回の主役は、阿良々木 暦と忍野忍のツーマンセルであったと感じました。
 忍の化物語当時の心理を想像させる描写であったり、傷物語や偽物語であえて語られないでいた暦と忍が本当にはどういう関係であったのかが明確に見えて、それらが非常に感動的でした。
 また今回は久しぶりに忍野メメの見透かした言葉が出ますが、今回の見透かしっぷりは神がかっているなあと思いつつも凄く小気味よかったです。
 また、毎度思うのはこのシリーズの広げた風呂敷を畳む早さです。
印象としては「風呂敷こんなに広げてどうするんだ!?」と感じた数ページ後、下手したら次の行には畳まれているという感じです。
もちろん乱暴に畳んでいるのではなく、風呂敷が広がっていると思って読んでいる部分が、実は後から見返せば畳んでいる部分だったという、トリック的な妙があると思いました。
 あとがきをみると、著者はスケジュール的にもかなり厳しい状況で書いてらっしゃるようですが、化物語セカンドシーズン今の所非常に盛り上がっているという印象です。