掟上今日子の遺言書、ドラマ版と比較して(ネタバレあり)

評価:
西尾 維新,VOFAN
講談社

¥ 1,350

(2015-10-06)

 先日記事に書いた、西尾維新によるライトノベル「掟上今日子の遺言書」を原作としたドラマ版(タイトルは掟上今日子の備忘録)を観ましたが、やはり内容は大きく変更されていました。
 掟上今日子の推薦文のドラマ版などでも未成年が関わる部分はストーリーが変更されており、この辺はドラマというメディアにあわせた適切な判断かなと思ってますが、今回の推薦文の変更は西尾維新の性悪(石丸小唄ばり)な茶目っ気が見えたように思えてとても面白かったです。
 いきなりネタバレですが、今回の犯人である逆瀬坂雅歌は極度の恥ずかしがり屋で、本の好みがばれたら相手を殺して自分も死ぬという病的レベルで、自分を知られるのを恐れています。
 そんな彼女は「人は理解しあうことで助けあえる」という主張の対極にある、「それって都合の良い美談に盛り上がってその輪に入れない人を傷つける無神経な言い分じゃないのか」という主張を象徴するキャラクターであると同時に、身勝手な思い込みから対話や熟慮することなく他人や自分を傷つける人間を象徴するキャラクターでもあります。
 そんなキャラクターを描いた物語の結末で、そんなキャラクターに向かって、ドラマ版の隠舘厄介がとった対応はまさに地雷を踏み抜く行為のようだったと感じました。
…ちなみに原作では上記の逆瀬坂雅歌のキャラクターに見合った異なるラストが描かれていますので、原作未読の方は是非読んでみて下さい。
 という解釈をしていたぼくは、ネットニュースなどで逆瀬坂雅歌の主張やキャラクターではなく演じた浅見姫香の可愛さが強調され、厄介くんの言葉が美談のようにな扱われていたのは、原作で描いていたテーマの重要さであったり、ライトノベル…あえて文学と言いますか…だからこそ出来ることを明確にしたなと感じました。
 同時に原作のみで自分の創作物をうわべだけ他人が利用することについても描かれていたので、なんかもう色々痛快だなあとニヤニヤしています。