オリジナリティで思うこと

 Eテレで放送されている「浦沢直樹の漫勉」の藤田和日郎の回がとても面白かったです。
漫勉は下記コンセプトの番組で、作家が実際の締切の中、入稿用の原稿に向かい作業している様子が撮影され、それに対して後日作家本人と浦沢直樹が対談しますが、そのやりとりから、毎度凄いレベルで仕事をしている達人同士の迫力を感じさせられます。

漫画家たちの仕事場に密着。最新の機材を用いて、「マンガ誕生」の瞬間をドキュメントする。
そして、日本を代表する漫画家・浦沢直樹が、それぞれの創作の秘密に、同じ漫画家の視点から切り込む。

 藤田和日郎の回ではオリジナリティの追求が印象的で、自身が描くものへの大きな期待に対して、それ以上に仕上げるべく取り組む様子は、制作に関わる人間としては、凄い重圧だろうと思う一方とても羨ましかったです。
 ぼくを含め多くの制作者は「あなたの作風で作って下さい」と言われるのを夢見つつ、実際には「他者が作ったあの作品みたいなものを作って下さい」が圧倒的に多いです。
そして、職業制作者の場合、自分の個性とかオリジナリティを消して、クライアントやプロジェクトのために徹することが求められることが多いです。
一方で「他者の作品みたいに」というリクエストから対話と同意を通して「オリジナリティあるものに至った」というアピールに失敗すると、「劣化コピーを作った」とか「パクリを作った」という評価で終わります。

 そういう「お金を頂いている以上必要な自分を殺した対応」と「インスパイアしつつも明確なオリジナリティ」の両立をギリギリまで考える機会が多かった時に、藤田和日郎の強烈なオリジナリティの追求を見て、やっぱすっげえと感動しました。