桐島、部活やめるってよを読みました

 朝井リョウによる小説「桐島、部活やめるってよ」を読みました。
 5編からなるオムニバス形式作品で、タイトルになっている桐島は全く物語に登場しない…までは噂で聞いていたのですが、彼が部活をやめることが大きく影響するのすら「小泉 風助」の章くらいだったって感じです。
そういう意味では短編集でよくある、納められた短辺の代表的なものが本のタイトルになっている感じかなあ思いました。
 とはいえ内容はとても面白く、特に今時のスクールカーストについて生々しく丁寧に描かれていたように思いました。
 自分の学生時代は「ヤンキー」がまだいた影響か若干事情が違いました(暴力でスクールカーストが割とひっくり返る時代でした)が、それでもそうだったなあと思い返すシーンも多かったです。
まあ学生時代は居心地の悪い思い出が多く、(性別は違うけれど)沢島亜矢の語り口が一番しっくりくるかなあと思いました。
 一番居心地悪かったのが小泉風助で、昔自分が部活で手を抜いたとか上手に出来なかったことがイヤな汗が出るくらい思い出されました。
 前田涼也に関しては、オタクが無理(背伸びか?)してラグビーしてたぼくとしては「ああなりたかったなあ」っていううらやましさが先でした。
 宮部実果は「何その携帯小説みたいな話は」って感じで、菊池宏樹と東原かすみはちょっと想像出来ないカースト上位者で「この世にこんなすげぇ奴って本当に居るのかよ」とかひがみながら読んでました(笑
 こういうテーマを描いた作品は、渦中の若者に向けたものでなく(環境的にも心情的にも直視出来ないと思う)、むしろ20代中盤以降の若い頃より幾分素直になって、また経済的に生き方や生きる場所が選べるようになった世代が「大人のくせに青春みたいなことする」のにとても役立つのかなあと思いました。
 ちなみに、映画の評判がとても良かったのでどちらを先にするか悩んだのですが、原作から先に読みましたが、あの情報量だったら映画でも充分に表現できると感じたので引き続き映画版も観たいなあと思っています。