ハウルの動く城の原作「魔法使いハウルと火の悪魔」がKindle Unlimitedで読めます(ネタバレ感想あり

Amazonによる、月額980円(税込)で和書12万冊が読み放題になるサービス、Kindle Unlimitedで、ハウルの動く城の原作「魔法使いハウルと火の悪魔」が読めます。

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ハウルの動く城 1 魔法使いハウルと火の悪魔 (徳間文庫)

魔法使いハウルと火の悪魔について

ハウルの動く城は、スタジオジブリ制作、監督 宮崎駿の日本の長編アニメーション映画で有名ですが、イギリスのファンタジー作家ダイアナ・ウィン・ジョーンズによる原作「魔法使いハウルと火の悪魔」が原作で、そちらもとても面白いのでお勧めです。

魔法使いハウルと火の悪魔 – Wikipedia

アニメ版との違い

以前にアニメ版「ハウルの動く城」の意味が分からなかった部分を理解するために、解説サイト経由で「魔法使いハウルと火の悪魔」の一部の設定を調べたことがありました。

ハウルの動く城についてまた少し考えました | Office Nakao

しかし、通しで読むとほぼ別の作品という印象でした。
この点は批評家の間では賛否両論だったようですが、原作者のジョーンズさんは、アニメ版「ハウルの動く城」を高く評価されたようです。

相違点の比較に関しては下記のサイトなどが分かりやすいのでお勧めです。

『ハウルの動く城』の原作小説設定【映画では描かれなかった秘密】【ネタバレ注意】 | ciatr[シアター]

原作ファンの怒りの批評としては、
―原作vsジブリ映画 -”ハウルの動く城”」が面白いです。

またアニメ版の「ハウルの動く城」を宮崎駿監督作品としての考察は、下記がとても面白いです。

岡田斗司夫ゼミ#243(2018.8)ハウルの動く城、宮崎がこっそり仕込んだマゾ視点~ 幻の細田版コンテと『消されたハウル』のすべて

それに対する宮崎駿監督の反論もまた面白いです。
…記事の中で宮崎駿監督が『ハウル』の評価に怒りを覚え「殴りに行こうかと思って(笑)」と語ってらっしゃるのだが、宮崎駿監督になら是非とも殴られてみたい(笑)

「『ハウル』の評価には怒ってますよ!」――宮崎駿が語る『ハウルの動く城』 | スタジオジブリ 非公式ファンサイト【ジブリのせかい】 宮崎駿・高畑勲の最新情報

違いがなぜ起こったのかについての考察は下記が面白く、アニメ版「ハウルの動く城」への違和感の理由は分かったと感じます。
老いる事をネガティブには描かない、というオリジナルのテーマを入れた結果、作り手が迷子になってしまったというのは、大きなポイントだと思いました。

『ハウルの動く城』における原作の精神とは―宮崎駿監督が目指したもの

アニメ版「ハウルの動く城」に対する違和感はより強く

アニメ版「ハウルの動く城」で苦手なのが、戦争に対して、サリマンや隣の国の王子が「下らない」「終わらせる」と語る部分です。
彼らは戦争を始めたり終わらせたりする権力や魔法の力を持つ存在で、ソフィーやハウルはそれに巻き込まれた…と考えると、凄く後味が悪いです。
…原作がより長い作品で、サリマンや隣の国の王子の戦記めいた描写があれば、その辺にも納得できると期待したのですが、両名とも登場すらしておらず、さらにモヤモヤした気持になっています。

魔法使いハウルと火の悪魔、とても面白かったです

アニメ版「ハウルの動く城」とは異なる物語である、「魔法使いハウルと火の悪魔」ですが、とても面白く、小説(電子書籍)というメディアでなら「魔法使いハウルと火の悪魔」の方が(当然だけど)優れていると感じました。

物語はソフィーの目線から見た、困った男ハウルを中心とした物語を描いており、その中でソフィーが自身の思い込みで信用出来ない語り手になっている点もあり、複雑な女心?みたいなもの?が感じられ、ソフィーに対して強い好感を持ちます。

一方でハウルの描写は、信用できない語り手なソフィーによるものが多く、「浅はかなことしか考えていないに違いない」という解釈が強調されて、女性である著者の男に対するある種の主張も加わっているようで面白いです。
…とはいえ、ハウルに対する、女ったらしという軽蔑には、女を落としてしまうちょい悪な美男子という歪ながらも高い評価を感じ、単純でない感情も感じます。
また、ソフィーからみたハウルは、内々での人間性はともかく、外面であったり、魔法を駆使する描写は一貫して格好良く、自分の元に引き留めておくのが難しく、また別の女性が言い寄って来てしまう不安のある、油断ならない異性として強調されていると感じます。

物語は、全体は複雑ですが、ソフィーとハウルに絞って見ればとても分かりやすいです。
元凶でありラスボスは、荒れ地の魔女(と彼女と契約する火の悪魔アンゴリアン)で、ソフィーが物に命を吹き込む魔法の力を(無自覚に)身につけ、それを使いハウルとカルシファーの契約を終わらせる。
ソフィーとハウルが共闘し、火の悪魔アンゴリアンを倒し、魔女の呪いを解くことでソフィーは若い姿に戻りハウルと結ばれる。
という物で、読み終わったあと、清々しい気持になれます。
やはり、アニメ版では上述した老いる事をネガティブには描かないという縛りが、話をややこしく、作品にも枯れた印象や老練という匂いが強くなっていると感じました。

それと、比べると「魔法使いハウルと火の悪魔」の若々しさが、とても大きな魅力と感じられ、アニメ版を既に見た人にとって、原作最大の見所になるのかなと思いました。