ドラゴンクエスト3HD-2D一周目でゲーム性を考える

 以前に、恐れ多くもSFC版ベースのリメイク版ドラゴンクエスト3のゲーム性についてあれこれ書きました。
それを踏まえて、主にSFC版との比較としてのドラゴンクエスト3HD-2Dのゲーム性の違いについて、振り返りたいです。

HD-2D版『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』ファイナルトレーラー

ドラゴンクエスト3のゲーム性で思うこと | Office NaKao

ドラゴンクエスト3HD-2D一周目でゲーム性を考える

SFC版は鍛錬する時間が多ければ楽ができる時間も増えるというシンプルさ

 ドラクエ3のゲーム性は、ランダムエンカウントモンスター…ザコ敵を倒すレベルアップ(ゴールド集めなども含む強化)にかける鍛錬の時間とそれにより楽が出来るご褒美の時間のバランスと解釈しました。
 楽ができる時間とは、バトルだとザコ敵が脅威なく連戦でも倒せる状況で、イベントだと脅威になるザコ敵の居ないフィールドの範囲とも表現出来ると思います。
ちなみに、楽が出来る広いフィールドで過ごす時間が長いと、自由度の高さを強く感じます。

 コンピューターRPGの基本ですが、FC版時代からドラクエ3での鍛錬とご褒美のバランスは素晴らしく王道RPGと評される理由と感じます。
そのために、時間をかけた強化が色あせるような美味しい要素には慎重です。

 SFC版では、「盗賊」、範囲攻撃が出来る装備、「ちいさなメダル」収集といった新要素で、レベルアップ以外の鍛錬法が増え時間の省略に加えより多くの職業での攻略が手軽に楽しめるようになりました。
 そういった新要素が増えても、「ボストロール」や「バラモス」のバランス変更によって、鍛錬と楽ができる時間のバランスが取れていた点が優れており、SFC版が神リメイクと評される理由と感じます。

戦闘中はバフ・デバフによって楽な時間を作る

 SFC版の戦闘では味方に「スクルト」や「フバーハ」といった強化のバフを、敵に「マホトーン」や「ルカナン」といった弱体化のデバフを使うことで、有利で楽な時間を作ることが重要になります。
特にSFC版の「マホトーン」はインパクトがあり、「ボストロール」や「バラモス」には必須です。
 一度効けば永続するデバフはゲーム攻略としても重要ですが、成功すればその後に、長い楽な時間になるというご褒美感の演出にも役立っています。

逃げ回るという戦略もあるが

 ザコ敵戦は戦闘を回避する「逃げる」という選択肢があり、(選択した回数による)確率判定で逃げられるので、逃げ回って、先に装備を調えるというハイリスクハイリターンな戦略もあります。
低レベルクリアに挑戦する場合などは必須になりますが、こちらのゲーム性はやり込んだことがないので、今回は触れないでおきます。

ドラゴンクエスト3 そして伝説へ… 攻略・解析

Card

HD-2D版は「楽ができる時間」が削られ「新システム」重視

 SFC版の感覚でHD-2D版をプレイすると、「楽ができる時間」が無駄と判断されていると感じました。
イベント面では、攻略知識があれば楽が出来るタイミングに新たなボスが追加されています。
バトル面ではバフ・デバフ共に時間で効果が切れ、特にデバフは一瞬で切れることもあり、基本はバフを維持して相手の攻撃を受け続ける…という戦闘バランスになっています。
 「楽ができる時間」よりも「多くのゲーム要素」を推したのは、ゲーム行為が多いほど楽しいという価値観や配信映えなど今どきのトレンドにマッチしていると理解しています。

 上記に加えて「魔物使い」と「はぐれモンスター」収集が追加されたことで、イベント・バトル共に従来のドラクエ3の攻略知識よりも新システムを理解し活用することが重要となりました。

HD-2D版を楽しむ上で肝になるゲーム性

 初見のゾーマを倒すまでに絞ると、転職によるスキル集めなど効率の良い鍛錬探しと、ボス戦中心の対策し続ける戦闘という直ぐ結果が出ることを次々にやり続けるゲーム性を楽しむことが重要と感じました。
 追加ボスも、新システム活用のトレーニングとレベル不足が深刻にならない調整と考えれば、ゲーム性は一貫していると感じます。

クリア後も含め新ボスメインのバランス調整となった

 ゲーム性を流れで見るとHD-2D版では、新ボスで事前鍛錬と工夫が求められ、旧要素と旧ボスが楽な時間になりがちです。
「レヴナント」が象徴的で、このタイミングのレベルアップで「ネクロゴンドの洞窟」→「バラモス城」が楽な時間になり、バラモス戦はレヴナントで覚えた防御アイテムと防御系バフメイン戦術の応用で倒しやすくなり、随分インパクトが薄れてしまいます。
 クリア後には鍛錬のやりこみが求められるゲーム性になるようですが、「ゾーマ」や「しんりゅう」戦は「ビーストモード」+「まものよび」が圧倒的戦力となる時期で、やりこみが報われるのは「しんりゅう」のターンバトルや「試練の神殿」辺りからと感じます。

HD-2D版を楽しむセンス

 ゲーム性やシステムに思い入れのある(ぼくの様な)タイプは、HD-2D版には混乱すると思います。
SFC版ドラクエ3の定番のプレイスタイルや、想い出あるボスよりも、新システム攻略や新ボスの方にインパクトがあるのを見ると、余所(別タイトル)でやって欲しい…とすら感じます。

 一方で、ドラクエ3の物語性や世界感に強い思い入れがあり、あの世界を舞台にした新たなゲームをプレイしたいという人は、素直に新しいドラクエ3を楽しめると思います。

ちょっと余談

 一歩引いた客観的な感想は上記のようになりますが、我ながら老害的とは思いつつ過去の経験への執着から、思うことを余談として書きたいと思います。

古参プレイヤーとしては変な我慢が求められる

 一般論として「楽ができる時間が長い」よりも「常にやる事が詰まっている」方がゲームとしてリッチで正しく、「SFC版と同じ」よりも「新システム活用」の方が新作としても正しいです。
初見プレイヤーにとっては比較になる楽が無いので気にせず楽しんでおり、何よりドラクエ3が盛り上がるならばと、SFC版贔屓による不満は我慢して飲み込もうというのが、大人なSFC版ファンには多いはずです。

 そんな状況で若い子たちから「正直微妙…」という評価を受けると、SFC版やFC版は面白かったんだ…と反論の一つもしたくなるし、面白く感じなかった自分は間違ってなかった!と、飲み込んだ気持が溢れ出てきます。

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印象的なバトルを振り返ると…

 個人的にゲームを象徴する印象的なボスは、FC版は事前の三連戦も含めた「ゾーマ」、SFC版では「バラモス」となります。
両者とのバトルは、リメイク作が出ると聞くと、また戦いたいとワクワクした気持になります。
 一方で、HD-2D版を象徴する印象的なボスは「よみのばんにん&ファントム」か「パンドラボックス」となります。
両者とのバトルは、二周目を躊躇するほど煩わしく、一方で彼らで楽ができる鍛錬をすると他のバランスが怪しくなります。
 この印象的バトルの差は各バージョンの個性を、意外と的確に表現しているように感じています。