1/11 じゅういちぶんのいち面白かったです(ネタバレあるかも)

 中村尚儁による漫画「1/11 じゅういちぶんのいち」が面白かったです。
一人のサッカー選手安藤 ソラと彼に影響を受けた人達を描いた、泣かしに来る感動を描いた作品です。
 主人公のソラやそれ以外のキャラクター達もみんな「やれば出来る人」で、さらに努力が報われるという展開が多いのに、説教臭かったり押しつけてくる感じがないのがこの作品最大の魅力だと思います。
 ぼくがそう感じる理由は、みんなが平等に苦しくて不幸という部分が自然に描かれているからだと思います。
 どんどん活躍していくソラもそこに至までにあった苦しさだったりそこに至ってしまったからこそ続く不幸みたいなものが描かれているし、真壁慎一郎のエピソードでは挑戦せずに居続けることの苦しさが、山中寛太と繭の年齢と共に男子とはサッカーが出来なくなる女の子の多分解決できない不憫さだったりと、とにかくみんな不幸です。
 その一方で紺野と関みたいな、不幸で不憫な境遇だったからこそ幸せボケしているとつい忘れて蔑ろにしている幸せに触れる事ができたというようなエピソードがあったりと、どうも不幸を単なる悪いことと描いていないようで、その結果、頑張るとか乗り越えるだけでなく、みんな不幸に折り合い着けつつ幸せに生きてるしまあぼくもそうするぞ…みたいな気持にさせられました。
 そんな不幸一杯の作品で何よりの不幸が第一話に描かれているというのが切なすぎるなあと思っていたら、最終話でその不幸すらも「みんなそうだから」とまとめたのは本当に凄いなあと思いました。