月は無慈悲な夜の女王を振り返って

 NHKスペシャルの「「NEXT WORLD」」私たちの未来を観ていて、ロバート・A・ハインラインによるSF小説「月は無慈悲な夜の女王」を思い出しました。
 「NEXT WORLD」でテクノロジーが進化することによって、人間の日常がどんな風に変わるのか?とりわけ人工知能の高性能化にともなう未来予測について描かれていました。
全体的にコメディタッチで、不便さが強調されていたり現代の社会体制や価値観が変わらないままテクノロジーが進化した世界を描いていることからのめり込めませんでしたが、「月は無慈悲な夜の女王」を思い返して当てはめるとぐっとリアリティが出て「NEXT WORLD」の面白さも深みが出るなあと思いました。
 「月は無慈悲な夜の女王」には超高性能な人工知能「マイク」が登場しますが、その万能とも思える能力と論理的思考による頭の良さが際立っており、作品を読み進めると人工知能に人間が従って生きるのは合理的かもしれない…という風に感じます。
 一方で、マイクは主人公である月世界の革命家マニーに独占されており彼らにとっては頼りになる味方ですが、敵対陣営である地球連邦にとっては非常に危険な存在だったりと、人工知能に欲望や悪意が無いとしても、所有者と自身の関係によってはとんでもない脅威となる点も重要かなと思います。
 しかも「NEXT WORLD」の体制派によるAIの活用に比べて、「月は無慈悲な夜の女王」の革命派によるAIの活用は利用者に得られるメリットが圧倒的に大きく、またAI潜在能力もより多く引き出しているように思います。
 AIに対して「自分達が支配される」みたいな心配をするよりも、AIを駆使した革新的な存在に現在得られて当然と感じるものが根こそぎ奪われる心配が必要なのかなあと思いました。

月は無慈悲な夜の女王
2076年7月4日、圧政に苦しむ月世界植民地は、地球政府に対し独立を宣言した! 流刑地として、また資源豊かな植民地として、月は地球から一方的に搾取され続けてきた。革命の先頭に立ったのはコンピュータ技術者マニーと、自意識を持つ巨大コンピュータのマイク。だが、一隻の宇宙船も、一発のミサイルも持たぬ月世界人が、強大な地球に立ち向かうためには……ヒューゴー賞受賞に輝くハインライン渾身の傑作SF巨篇。
NHKスペシャル|NEXT WORLD 私たちの未来 – NHKオンライン
テクノロジーは私たちの生活をどのように変えるのか、ドキュメント取材と近未来ドラマで構成するシリーズ番組。