小説新世界よりが面白かったです

 貴志 祐介による小説「新世界より」が面白かったです。
呪力という万能の力をもった人間の社会や冒険を描いたファンタジー作品であると同時に、世界に隠された秘密を少しずつ暴いていくというSF作品でもあり、とても読み応えがありました。
 一巻の半分くらいはまでは、起承転結でいうところの承がとても長く、ある種の我慢が要求されますが、世界の秘密に触れた瞬間一気に引き込まれます。
 ライトノベルなどによくある、社会を崩壊させるくらいの力を個人が持った世界の危うさと、そういう人間が存在することを受けての社会の進化が、素晴らしく、また恐ろしく描かれている点が気に入りました。
 人間が社会というひとくくりになった際の、弱者に対する強者の傲慢さの描写がとても生々しく、最後まで主人公達には感情移入出来ませんでしたが、それこそが最大の演出であったなと思いました。