千と千尋の神隠し、岡田斗司夫さん解説を見た影響

 岡田斗司夫さんの解説動画を観ると、ジブリ作品の印象が大きく変わる(より深く楽しめる風に)というのも、だいぶ有名になっていますが、千と千尋の神隠しの解説もとても面白いです。

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 具体的な解説内容や、明かされる謎については、ぼくの拙い要約よりも上記を見て頂いた方が良いと思い、あまり触れずに、それを受けてどう感じたか?という点だけを書きたいと思います。

それまでのぼくの千と千尋の神隠しに対する印象

 千と千尋の神隠しは2001年に劇場で観て、その際は大満足しました。
圧倒的に美しい作画や映像演出に感動している内にあっという間に終わったという印象でした。
ストーリーやテーマも、油屋で千尋が成長する気持の良いサクセスストーリーとして、シンプルな娯楽作品として満足していました。
当時は、自分の属するIT業界の勢いを真に受け、久しぶりの宮崎駿作品はやはり面白いという高揚感、更には作品の高評価…特に劇場興行収入の伸び方などから、リアルなサクセスストーリーとしても楽しんでました。

 ただ、時代が経つと共に、千尋の成長部分が都合の良い物と感じるようになり、作品全体に批判的な印象すら持つようになってきました。
 その後の宮崎駿作品を含んだジブリ作品が楽しめなくなったことへの苛立ちも影響したと思います。
…余談ですが、周りの意見を色々聞くと、2001年当時からサクセスストーリーな部分に対して冷ややかに見ていた人は多かったようです。

岡田斗司夫さんの解説で印象が変わった点

 一番強く共感したのは、ハクの謎…解説のネタバレ?になりますが、ハクは亡くなった千尋の兄であるという仮説部分です。
千尋に対するハクの親密な対応は、川の神とそこに落ちた少女との関係より兄弟と言われた方がしっくりくるし、ハクの名前を取り戻すシーンの盛り上がりも納得です。
また、作品全体に感じる不吉な演出…例えば、千尋が元の世界に帰る時の「振り向いてはいけない」などにもあいます。
岡田さんの解説や資料などからも、内々(制作者側)ではこの設定である程度は動いていたと感じます。

 しかし、ぼく個人としては、それでも作品全体としては、途中で描くことをやめたか避けた、ボツ案の残滓と感じています。
特にハクが千尋の両親(兄説なら死に別れた自分の両親)に感情を見せる描写や演出が、少なすぎると感じました。
 それよりも、ハク兄説も含め、当初想定していたストーリーを途中で変更している部分がいくつかある…と考えた方が、千と千尋の神隠しの物語全体のちぐはぐな印象に一番しっくりくると感じました。

 などと思いつつも、千と千尋の神隠しの千尋のサクセスストーリー部分にご都合主義を感じてしまい、ノれないと感じたタイミングだと、ハク兄説は非常に良い刺激になりました。
また、ボツ案の残滓と感じる部分があると考えれば、天才クリエイターのサクセスストーリーみたいに想像していた宮崎駿作品制作が、多くの苦悩の上に作られているという新たな視点となり、また違う感覚で楽しめるようになったのは間違いなく、解説を見た後に改めての千と千尋の神隠しの視聴お勧めです!

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