漂白への憧れ

 ぼくは時々ふと一人になりたい衝動に駆られます。
フリーランスで共働きで子供が居ないとなると、かなりの時間一人で居るのですが、それ以上に一人になりたいことがあります。
具体的にはアトリエだとか仕事場だとか、空間の持ち主として完全に一人である事に憧れています。
 中高年向けの雑誌に「書斎を持つ憧れ」が描かれているのや、宮崎駿監督も映画制作前に一軒家を借りて自適で孤独な一人暮らしをするというのを見たので、こういう欲求はまあ一般的なのかも知れません。
 その欲求の極端な例もしくは本質について、夢枕獏による小説「風果つる街」の後書きで著者が
「勤めを捨て、妻を捨て、子を捨て、ただの風となって流れてゆくことは、たぶん、男に残された最後の夢ではないだろうか。」
と書いてました。
 これを読んで、自分の中途半端さにあきれつつ、どこか納得するものがありました。
 しかし、この作品に出てくる男達は、全てを捨てたいという欲求にどっぷり浸かり、全てを捨ててその代償を受ける事になります。
 その生き方を夢とはとても考えられませんが、自分自身の中にそういうものがあり、そしてふとしたきっかけでものすごい暴走をする事を知り、男の常識として肝に銘じておこうと思いました。