ヒトクイマジカル 殺戮奇術の匂宮兄妹が面白かったです(ネタバレアリ)

 西尾維新によるライトノベル「ヒトクイマジカル 殺戮奇術の匂宮兄妹」が面白かったです。
この作品は戯言シリーズの五つ目の作品になります。
戯言シリーズに関してはいずれ全部読んでから一つずつの感想を書いていきたいと思いますが、ヒトクイマジカルに関しては、以前に記事にしたクビシメロマンチストと似た非常に鋭い感動があったので、覚えているうちに記事にしようと思いました。
 以下からネタバレアリで書き進めます。


 クビシメロマンチストで感じた主人公の歪んだ部分が今回さらに深く描かれていたなと思いました。
主人公はどうしようもない悲しいことがあっても、自分のような人間はそのことを悲しむ資格がないという風に考えて、目の前の出来事から目をそらします。
 それは単純に悲しい事からの逃避であるとも考えられるし、もう一歩先にある悲しみに暮れて人に迷惑をかけることからの逃避とも考えられるし、全然違う人並みな感情を自分に許さない厳しさとも考えられるのですが、いずれもそういう彼の考えが彼の人生をがんじがらめにしていることが痛いほどに伝わってきました。
 主人公はものすごく器用でその事を深く考えることを自分にも許さず、他人にも立ち入られないように上手にかわしますが、今回ついに無様に人に甘えてしまいます。…まあ、甘えるといっても、正面切って感情をぶちまけるという本当に無様なものですが、切れた主人公を見た時の愛おしくて仕方なかったです。
特にそのぶちまけた後の「失望される。見捨てられる。嫌だ。」ってこの言葉は胸にぐさぐさと突き刺さりました。
 それに対するみいこさんの対応が素晴らしく、月並みですがああいう女性は素晴らしいなあと思いました。