FF8の考察論争「リノアル説」が面白い

 ファイナルファンタジー8で、物語のヒロインであるリノアが、未来にラスボスであるアルティミシアになるという「リノアル説」が面白いです。
 またこの説を巡る論争は、ネット上で肯定派と否定派に分かれて、時に口汚い言葉も飛び交うほど熱く、説そのもとあわせてとても面白いです。

ぼくは両立派です

 最初にぼくの立場を明確にすると両立派になります。
 リノアル説でないと意味が解らない意味深な表現や演出が作中や映像にいくつかあり(映像に多いように感じます)、そこを踏まえると肯定派となります。
 一方で、作り手全体がリノアル説を前提には作り込んでおらず、むしろ自由な解釈ができる幅を持たせていると感じています。
リノアル肯定派を牽引する一部の人は、唯一の真実としての公式化を目指していますので、彼らからみれば否定派となります。
 しかし、どちらとも言えないという立場ではなく、自由な解釈から、バッドエンドなリノアル説が産まれ、ハッピーエンドに至ったという流れも含めてリノアル説が好きなので、両立派となります。

リノアル説でない場合

 FFXでもお世話になったてつおさんによる解説・考察動画が分かりやすいのですが、リノアル説に触れなければ下記のようにシンプルな物語となります。
 おおざっぱに言うと、リノアの魔女の継承の行方やアルティミシアが未来に現れるのかという疑問が残りますが、リノアル説も含んだ様々な可能性へ繋がる分岐点で終了という演出だったと解釈しています。

【全てわかる】FF8愛の物語ストーリー解説

バッドエンドなリノアル説について

 リノアル説にもいくつかの解釈の違いが存在しているのですが、ぼくの好みは、リノアル説を調べている内に見つけた、Kiss The Moon ~ アルティミシア ~で描かれる、悲劇…バッドエンドを描いたリノア=アルティミシア説です。

 この説の詳細は上記にありますが、おおざっぱに言うと、
リノアは、大団円のエンディング後、ずっと魔女の力の継承をせずに生き続けアルティミシアとなり、時間を遡り過去のスコールや自分達に討たれ、13年前のイデアに力を継承し消滅する
という流れになります。

 リノアル肯定派でこの説を推している人は少数派だと思いますが、一度はこの説を経由する方がリノアル説は深く楽しめると思います。
 ハッピーエンドだと思っていたFF8を調べたら、ヒロインがラスボスへと繋がっていた…という、恐怖の都市伝説にありそうな展開に驚愕し、良かれと信じ倒したラスボスがヒロインだったという罪悪感も刺激されます。
 また、この説だと、後述するハッピーエンド説で語られるリノアのループなど難しい解釈が不要で分かりやすく、シンプルに泣けます。

 何よりも、この説は説得力がある一方誰かの助けを求めているようで、多くの人を考察や論争に引き込む力を感じます。

 とはいえこの説が真実だとしたら、エンディングのあのハッピーな雰囲気は、流石に悪趣味が過ぎるし、愛着持ってクリアしたプレイヤーは納得出来ないと思います。

ハッピーエンドなリノアル説について

 リノアル説でも、てつおさんの解説が分かりやすいです。
…解説動画ながら感動出来るのは素晴らしいです。

FF8 世界一わかりやすいリノアル説

 おおざっぱに言うと、
リノアはアルティミシア撃破後に、アルティミシアになる未来も含んだループで色々なことを経て、時間圧縮世界でスコールと再開、無事に元の時代に戻る
という話になります。
…全然解らないですね。ぼくも自分で何を書いてるかわからないです。
是非とも上記動画でご確認下さい。凄くよくわかるはずです。(てつおさんすげえな。

 この説であれば、多くの伏線を面白く回収し、リノア=アルティミシアに感じる悲劇的な結末も否定出来、エンディング全体に漂うハッピーエンドな雰囲気を素直に楽しめます。

 ただ、単純なハッピーエンドと思っていたら、ヒロインがラスボスへと繋がる展開を経た複雑なハッピーエンドだった…という流れは、深く考察する動機としては弱く、単純なハッピーエンドを気に入ってる人がわざわざ調べるのは野暮ったく感じます。

 それよりも、バッドエンドのリノアル説を知り、不憫なリノアの救済を願う考察者の執念が、ハッピーエンドのリノアル説へ至った、と解釈した方が感動的です。
場外乱闘込みの説としてリノアル説が好きで、そういう意味で両立派となります。

ラストバトルがリノアル説と妙にマッチする

 余談ですが、アルティミシアとの最終バトルは、リノアル説ととてもマッチしていると感じます。
 逆さづりで気の毒な様子のアルティミシアに、時折よぎる罪悪感を振り払いながら自らを鼓舞して戦うようなBGM「The Extreme」は、何か隠された物語への想像がかき立てられます。
 リノアル説を知った時、最終形態アルティミシアの正体がリノアならすげえ納得できると感じました。
まあ、FFシリーズで、ラスボスが力に飲まれ、人間性を失った存在になるというのはお作法ではありますが、アルティミシアの場合、それ以上の執念を感じました。

FF8 リマスター アルティミシア戦

…全然関係ないけど、これ格好良い。リノアループ説インスパイア?(笑

The Extreme (Final Fantasy VIII) – GaMetal Remix

リノアル説は公式の真実となるのか

 個人的には、1992年発売の「ファイナルファンタジーVIII」で、リノアル説を唯一の真実として公式化することは難しいと感じています。
下記の、los********さんの2020/11/16 18:25の回答によると、当時のスタッフは、少なくともチームの統一見解としては、そのつもりで作っていなかったようです。
 
 リノアル説が話題になるほど、一度は否定したものを、後から公式のアイデアだったとは言い出しづらいと思います。
また、リノアル説は多くのアマチュア考察者が関わったことで、公式設定と明言すると、権利を主張する人が現れたり様々な炎上の火種になることが考えられます。

FF8のリノアル説の矛盾点とはなんですか? – Yahoo!知恵袋

 とはいえ、スピンオフ作品である、DISSIDIA FINAL FANTASYで登場するアルティミシアなどには、リノアル説をインスパイアした演出が多数あるようです。

DISSIDIA FINAL FANTASY NT | SQUARE ENIX

 エルオーネの明言に「過去は変えられないよ。」というものがあります。
リノアル説も1992年発売の「ファイナルファンタジーVIII」における公式設定を主張し触れづらい存在になるより、未来にFF8がリメイクされた際にインスパイアされた設定が採用されやすい考察として定着して欲しいです。