映画「武士の家計簿」が面白かったです

 歴史学者磯田道史の著書『武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新』原作の映画「武士の家計簿」が面白かったです。
下級藩士で御算用者(会計処理の役人)を務めた猪山家を主役に、幕末の加賀藩の武士の暮らしが細やかに描かれた日常系時代劇で、武士にはこんな苦労もあったんだなあとほのぼの楽しめる作品です。
 ぼくは、原作を紹介したNHKのドキュメンタリー番組を見ていたので、この作品にどういうドラマ性を入れるのかを楽しみにしていましたが、見栄よりも正直であることを重んじた生き方の清々しさと、それでも物に対する愛着は大切にする描写などは物欲にまみれる(実際には買えないけど)ぼくにはぐっと来ました。
 また父子の関係は作中で極端に暗く、どうしちゃったんだろうか?と思ったのですが、息子である成之が語り部であり彼の主観で物語が描かれていると考えると、そこは彼が父親に対して感情的であることの描写で、親からの恩を覚えていられない子供の残酷さをぐさっとくる演出で描いているなと思いました。