特等添乗員αの難事件を読みました I~II


特等添乗員αの難事件 I

特等添乗員αの難事件 II

 万能鑑定士Qシリーズにも登場している、特等添乗員αこと浅倉絢奈を描いた、特等添乗員αの難事件のI~IIが面白かったです。
ちなみに特等添乗員αというのは、ツアー会社がツアーコンダクターとしての彼女を広告でアピールするためにつけたあだ名みたいなもので、大仰さを笑って見ると面白いと思います。
 人の死なないミステリという点は「万能鑑定士Qシリーズ」と共通しますが、万能鑑定士Q 凜田莉子がロジカル・シンキング(論理的思考)を駆使するのに対して、浅倉絢奈はラテラル・シンキング(水平思考)によるひらめきで事件を解決していきます。
突飛なひらめきと言いつつも、ミステリのお作法であるところの、ヴァン・ダインの二十則「事件の謎を解く手がかりは、全て明白に記述されていなくてはならない。」は抑えられており、ひっかけ問題や意地悪問題を楽しむように事件を解決していきます。
 万能鑑定士Qの莉子と小笠原悠斗がなかなかくっつかないのに対して、絢奈と壱条那沖は早々に婚約関係になったり、劣等生でも莉子は波照間で愛されていたのに対して、絢奈は中卒後22歳までニートで家族から冷たく扱われていたりと、若干大人向けに作られていると思います。
Iはまだ劣等生な絢奈がエリート官僚壱条那沖の気まぐれによって才能を開花し、最終的には那沖を助けるという、シンデレラストーリー+αといった感じのエピソードでした。
劣等生の彼女が如何にして知恵を得たのかを描いた作品で、ラテラル・シンキングを好む人間に向いた勉強法など、読者に知恵がつく部分もあります。
IIは絢奈がIで手に入れた知恵や恋人たちとの軋轢を描いています。
絢奈は何故ラテラル・シンキングが得意なのか、ラテラル・シンキングを好む人間を世間はどう扱うのか?など、異端児の葛藤を論理的に描いています。