映画「メッセージ」の原作小説「あなたの人生の物語」を読みました(ネタバレあり)

 エリック・ハイセラー脚本、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の映画「メッセージ」の原作、テッド・チャンによる短編小説「あなたの人生の物語」を読みましたが素晴らしかったです。
ちなみに、ぼくは映画の方は見ておらず、またちょっと調べた感じ内容は結構異なっており、短辺小説ということで原作のネタバレありで書き進めます。

 原作ではエイリアン自体よりも彼らが利用する言語とその言語に触れた人間ルイーズ・バンクス博士個人の変革が肝だと感じました。
話したり頭のなかで考える言語によって人は思考や世界感が変わるという「サピア=ウォーフの仮説」なるものがあるそうですが、ルイーズ博士はエイリアンの高度な言語「ヘプタポッドB」を解読し理解する過程で、未来を知る感覚を得ていきます。
 それは個人の超能力とは少し異なり、始点と終点を決めると中点が決まるという「フェルマーの最小時間の原理」の例を交えつつ、ヘプタポッドB修得の過程で三次元を越える視点を持つことで自身の未来を思い出すように見通せる、将来的には万人が修得可能となりうる現実的で科学的で時に残酷な自然なテクノロジーとして描かれておりとても説得力があります。
…などとぼくが書いてもまったく伝わらないこの内容が、小説を読み進めて行く内に「もしかしたらそんな言語が宇宙にはあるのかもしれない」と、グイグイ引き込まれて行くのがSF部分の最大の魅力だと思います。

 そしてルイーズ博士の人生の物語部分もまた素晴らしく、時々不思議な時系列の語り口のルイーズ博士と娘の描写が入るのですが、それらが子を育てたことのある人間ならぐっときたり絶望したりするもので、とにかく目が離せなくなりますが、やがて「あなたの人生の物語」自体が、「ヘプタポッドB」修得で知った、彼女の未来が描かれているのかも?という予感にゾクゾクした感覚を覚えます。
 そして物語の結末では、ルイーズ博士に大きな選択の機会が訪れます。
その選択肢は、子どもを育てた事のある親にとっては本当に難しくそして正しい答えがないものなのですが、彼女は当たり前のようにあっさりとある決断をしますが、その姿が素晴らしく人を愛さずにはいられない人間の愛おしさや、人生との向き合い方が描かれていたように思います。
…なによりも、ここまでの物語を読んだことでぼく自身が、彼女と同じくらい一瞬で彼女と同じ決断をしており、なんかちょっと学べたような気分になれたのに驚きです。

 SFとしての魅力と人生の物語としての魅力と自身の体感ががぴったりあった瞬間の快感こそ、SF小説の醍醐味であり、「あなたの人生の物語」ではそれが存分に描かれていたと感じました。
…映画も相当面白いようなので、どちらもオススメです!

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