本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 漫画版を読んでみて

 以前に猛烈にはまった香月美夜による小説「本好きの下剋上」のアニメ版が10月から開始されます。
その予習も兼ねて鈴華作画の漫画版を読んでみたところとても面白かったです。

TVアニメ「本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません」公式サイト

本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部「本がないなら作ればいい!1」 本好きの下剋上(コミック) (コロナ・コミックス)

 漫画という限られた情報量のメディアにまとめた結果、見所が明確になり改めて作品の魅力に気づかされました。

 ぼくが漫画版を読み「第一部」のポイントと考えたのは、中の人本須麗乃の異世界でのカルチャーショック、主人公マインが成り上がっていく下剋上の様子、異世界で改めて気づく日常の幸せです。

 異世界のカルチャーショックは今どきの異世界作品では「ネットゲームと同じような世界」とあえて省略している(そこはテーマでない部分と切り捨てている)場合が多いのですが、本好きの下剋上では現代人から見た、中世時代の生活の不便さや、文化レベルの低さなどが丁寧に描かれており旅情感を覚え、さらには手つかずのチャンスがまだまだ存在するワクワク感もあります。
一方で不衛生で人権的配慮がなく人の命や尊厳が簡単に失われてしまうという厳しい社会の描写もあります。

 下剋上の様子は漫画版(そしておそらくアニメ版でも)ではマイン視点よりもあえて一歩引いて、虚弱で特別な病状を持った子どもであるマインをどう生かしていくのかという視点で見た方が感動出来ると思います。
 原作サイトの注意書きに「最初の主人公の性格が最悪です。ある程度成長するまで、気分悪くなる恐れがあります。」と書かれてしまう中の人麗乃の本に対する妄執?が、本当なら生きていけなかったはずの少女マインを救ったと考えると人の親をやってる身としては感動的です。
 ちなみに原作では現代世界の知識を使った創作によって、他人から賞賛され、商人から一目置かれ、多くのお金を得たりする下剋上?の喜びや誇らしさが丁寧に描かれてますが、漫画版では、そこは省略してマインが生きるために必要なものを手に入れていくという点を重んじて描いているように感じました。
創作に興味ある方は原作もオススメです(笑

 そして日常の幸せは、第一部は兵士の娘である少女マインから見た異世界社会が舞台のため、子どもが可愛く感じられる文化や風習のエピソードも多く描かれており、それらを家族で楽しむ日常の様子などは見ているだけで幸せになります。
特に漫画やアニメの場合、現代人の大人である麗乃の一人称で進む物語よりも、見た目が可愛い異世界の少女マインを外から見た描写が多い分、より可愛さが引き立ち、子どもがいる風景の華やかさや楽しさが際立つと思います。
 一方で、上述のように人権的配慮の乏しい社会が舞台であり、当然の家族の幸せがどれほど儚いかも繰り返し丁寧に描かれており、日常の幸せを見失わず子どもを愛おしみたいという気持を強くしてくれていると思います。

 という案配にとても気に入っておりますが、原作を読んだ時には、マインは上手くやってるけれど実はハードな世界であるという描写が、漫画やアニメで出るかなあと心配していたのですが、漫画版ではとてもわかり易く描かれていたので、アニメの方も楽しみになってきました。