映画、八日目の蝉が切なかったです

評価:

アミューズソフトエンタテインメント

¥ 4,518

(2011-10-28)

 角田光代による小説原作の映画「八日目の蝉」が切なかったです。
この作品は、NHKでテレビドラマにもなったそうですが、そちらは観ておらず、また原作も読んでいない、映画のみの感想となります。
 愛人である野々宮希和子が、不倫相手と本妻の娘を誘拐し逃亡生活をしながら育てるという事件を、誘拐被害者である恵理菜が過去を振り返る形で描くという物語で、ぼくの好きなクズが抱く愛がテーマなのかなあと思っています。
 不倫相手の子供を誘拐した希和子はもちろん、恵理菜の本当の両親も人間的だったり精神的におかしなところがあり、恵理菜自身も愛人として不倫をした結果妊娠しているという、出てくる人間がやたらクズだったりイカれている人が多いです。
 そんな風に登場人物がクズばかり(もちろんある程度の愛を持って)と割り切って観ると、「人間が人間をただ愛してしまうってどういうものなのか?」という本質的なものががつんと見えて来ます。
 特に希和子に対して恵理菜が抱いていた愛は、希和子が逮捕されたあと、本当の母親や社会から否定するように強要され、ただ人を愛するという気持を否定されることの辛さが鋭く描かれていると思いました。
 一方で、やたら描かれる不倫描写が、愛の盲目さの危うさか、人間愛と恋愛との違いか、はたまた社会が愛をゆがめているという象徴なのか、その辺が混ざっているのがまじめな夫婦たろうとしているぼくには気まずかったです。