借りぐらしのアリエッティを改めて振り返る

評価:
ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン

¥ 4,750

(2011-06-17)

 色々な考察等を経て考え方が変わったタイミングでちょうど地上波で放送されていた、借りぐらしのアリエッティを久しぶりに観た感想を書きたいと思います。
 いくつかの考察では、翔は物語後に受ける手術で死ぬという前提で作られているという意見があり、まあ物語のお作法やら、意味深さを考えるとそっちかもと思うのですが、それはそれでどうかってことでぼくは物語の後もハッピーである前提で考えたいと思います。
 …まあ、宮崎駿好きを気取るなら彼は、

漫画の主人公である少年少女がその映画なり、テレビなりでやったことで、人生を終えてしまうような描き方はしたくないんです。

と語っているので、今回もそっちなのかなあということで。
 そのスタンスでアリエッティのあらすじを考えると、
幼い頃から病弱で人の愛情もわからず、生きる希望を持てない気の毒な少年翔が、か弱い存在でありながらも必死に生きるアリエッティとの出会いを通じて生きる希望を持った
…となるのかなあと思います。わー、ぼくの解釈安直かも。
 翔がアリエッティに「君たちは滅び行く種族なんだ」という空気読まないことを言うのは「自分と同じ」か弱い存在に対する同族感を求めてだったと思います。
そんな事情を知らないアリエッティに必死の反論を受けて翔は落ち込みますが、一番落ち込ませたのはアリエッティに男友達(スピラー)が居ると知った時だと思います。いやあ、失恋してますなあ。
 その後、翔とアリエッティたちが母親を救出する課程で、か弱いと決めつけていたアリエッティのたくましさを知り何も出来ないと思っていた自分にも何かが出来ると感じたのだと思います。
そこで翔がやけに無理をしているのが手術失敗フラグぽくも見えますが、得た自信が精神に与える影響とか考えると、成功フラグとも感じられます。
…その辺は、ナウシカが傷ついた虫を虫笛で強引に飛ばした系の根性論ということで。。。
 翔が別れ際アリエッティに「君は僕の心臓の一部だ」というのは手術成功への自信を貰ったという感謝と初恋の人として忘れないという告白で、それを聞いたアリエッティが翔に髪飾りを渡す(女性が髪を下ろすって「女になる」ってメタファらしい)のは彼女も翔に恋をしていたという表現かなと。
つか、あのシーンの翔の指を触る仕草すげぇ色っぽいんだよなあ。
 また、アリエッティがヤカンで川を下るシーンには、出産とか繁栄にまつわる色々な象徴が込められているらしいのですが、か弱そうなアリエッティたちだけれどきっと生き残って繁栄していくだろうというのと、翔の手術は成功するだろうが重なっているのかと思います。
 で、最後にアリエッティがスピラーと親しげにするシーンは、叶わない初恋の失恋の切なさとえぐる描写だと解釈しました。
 アリエッティ最大の謎(行動が意味不明な人物)である、家政婦のおばあさんですが、ぼく的にあれは思春期の若者にとって鬱陶しいオカンであると考えています。
エロ本を読んでたらいきなりドアを開けたり、良かれと思って張り切ってやる行動全てが恋愛の邪魔になるし、しかもよくよく観察すれば「あんた、気づかないふりしてるけど悪意と作為持ってやってるよね、それ」みたいな存在かなと。
 という案配にハッピーエンドとして考えてもそれなりに成り立つし、翔が元気になったとして「初恋という心臓の一部はアリエッティに奪われている」というなんか切なさも残るのかなあと思いました。