十角館の殺人を読みました


 綾辻行人による推理小説「十角館の殺人」を読みました。
1987年に出版されて、新本格ブームを巻き起こしたと言われる定番作品ですが、ぼくは電子書籍でつい先日初めて読みました。
 ミステリーを純粋に楽しむことを目的に描かれた作品で、それ以外の情報はかなり淡泊に描かれているのはいわゆる本格ミステリーのお作法なのかなと思いました。
ただその結果蔑ろになりがちなWhy done it(ホワイダニット)もちゃんと、共感出来る範囲で描かれており、とてもバランスが良いなあと感じました。
 また、この作品は、文章というメディアでないと楽しめないトリックがあり、映像やビジュアル付きのゲームなどのミステリーが増える今になって読むと、「やっぱりミステリーは小説だね」と感じさせてくれます。
 謎解きについては早々にミスリードにはまり、読者に対するトリックをばらす瞬間まで気づくことが出来ませんでした。
とはいえ、この作品には何段階かの推理の楽しみ方があり、トリックをばらすシーンと警察からの報告冒頭までなら、ミスリードも混じっており推理を楽しめると思います。
 上級者レベルになると、序盤で目星をつけて、第三、第四の被害者が出た時点で仮説が完成していて、あとはハラハラしながら答え合わせを待つのですが、回答の正しさを補う伏線は特にないようです。
 ちなみにぼくの推理を振り返ると、第一の被害者の時点でミスリードにはまったのですが、完全に否定出来る情報が出たのがトリックをばらすシーンの後だったので、ちょっと残念でした。…まあ、無理の多い推理だったので、どちらかというと素直にやられたって感じでしたが(笑