同人サークル 07th Expansionによる同人ゲーム原作の夏海ケイによるマンガ「うみねこのなく頃に 散 Episode8」で描かれた真相を中心に Episode1を考えてみます。
うみねこのなく頃に散 マンガ版で全部の謎の答えが描かれてたんですね(ネタバレないはず) | Office NaKao
…上記の記事で、色々書いたのですが、明確な描写を避けた結果、ちょっと解りにくいため、フォローも兼ねて、あえてネタバレありで書いてみました。
漫画版の真相描写を参考に、うみねこのなく頃にの Episode1を考える
Episode1の犯人と共犯者
犯人は、紗音=嘉音。
共犯者は、下記の様に二つのグループが存在します。
Aグループ「源次、南條、熊沢」…紗音の正体を含めて全てを知る
Bグループ「絵羽、秀吉」…犯罪にのみ加担する
真里亞は極端なオカルト信仰から、紗音内に別人格としてベアトリーチェが存在すると信じ、紗音に都合の良い証言をするように利用されます。
犯行内容
下記が非常に細かくまとめられており、その後の戦人とベアトリーチェによる、赤と青の証言のフォローもされています。
ただ、それらを記載すると、慣れていない人は混乱しそうなので、この記事ではその後に登場する証言を無視してストレートな記述でまとめています。
第一の晩
犯人と共犯者が協力、睡眠薬などを利用し「蔵臼、留弗夫、霧江、楼座、郷田」を殺害、園芸倉庫に死体を移動させます。
紗音の死体は存在しないため、共犯者B(絵羽、秀吉)の嘘で、生存者(戦人、譲治、朱志香、夏妃)を騙します。
以降、紗音は嘉音として行動します。
第二の晩
密室などは嘉音、源次、熊沢の嘘。
共犯者B(絵羽、秀吉)に、相談を持ちかけるフリなどで入室し両者を殺害。
第三の晩
共犯者A(源次、南條、熊沢)と嘉音による嘘。
嘉音の負傷も嘘で、医師である南條が協力。
第四の晩
親族会議以前に死亡していた金蔵の死体を燃やす。
第五の晩
共犯者A(源次、南條、熊沢)と嘉音による嘘。
嘉音の死亡も嘘で、医師である南條の嘘で補強。
以降、嘉音も生存者(戦人、譲治、朱志香、夏妃)の前からは姿を隠す。
第六、七、八の晩
紗音=嘉音が「源次、南條、熊沢」を殺害。
紗音の嘘を盲信する真里亞は、無自覚に嘘をつく。
第九の晩
紗音=嘉音が夏妃を銃で殺害。
夏妃の銃は空砲にされている。
24時
島に設置された爆弾が爆発。真里亞以外は個人が特定出来る死体も発見されない。
【高画質版】うみねこのなく頃に EP1 ED 【Bring The Fate】
Episode1は犯人による創作
Episode1は事件後にメッセージボトルとして見つかった犯人の創作であり、ミステリーとして非常に魅力的ながら、かなり犯人にとって都合の良い展開が目立つのはそのためです。
例えば、紗音と嘉音が同一人物で変装によって全ての人を欺くというトリックや、共犯者の都合の良い行動などは、本当にそんな都合良くいくのだろうか?と疑問を覚えてしまいます。
そういった疑問に応えるように、Episode7で描かれる本当に起こったことは、とてもリアリティがあるものですが、一方でミステリーとしては拍子抜けするものでした。
犯行の意図
犯人は碑文の謎の出題と見立て殺人を行うことで、以上のどれかが起こることを望んだ。
- 碑文の謎を解くか過去の紗音との約束を思い出した戦人に、犯罪計画を告白し裁きを受ける
- 紗音の抱える秘密に気づいた穣治に、犯罪計画を告白し裁きを受ける
- 碑文の謎を解いた者に全てを譲り、犯罪計画を告白し裁きを受ける
- 全ての人間を巻き込んだ自殺を行う
結果、4となった。
原作で触れられる動機は譲治、戦人との関係
紗音=犯人が運を天に任すような、碑文の謎を利用した挑戦を行う理由は、原作では穣治、戦人との関係に悩んだ点が強調されます。
清い交際の末に婚約を申し込む穣治と、過去に告白され交際を約束した戦人との6年ぶりの再会に、揺れ動いた結果であると。
余談ですが、最後まで紗音との約束を全く思い出さない戦人は論外として、譲治も第一の晩で父親秀吉の助言に従い紗音の死体を確認しないという失敗をしています。
漫画版で触れられる動機は、紗音が譲治との関係に絶望したため
漫画版では、紗音のかかえる障害や、彼女の出自など、譲治からの求婚を受けられない理由が明確に描かれます。
紗音は幼い頃に遭った事故の影響で子どもが産めない体になっており、さらに金蔵の娘であり法的には血縁関係から譲治とは(戦人とも)婚姻を結ぶことは出来ません。
…そして、怪我の影響は不妊だけでなく、女性的な体への成長が出来ず、本当の紗音は嘉音のような少年的な体型をしているのを隠しながら、譲治と交際しています。
譲治は、社会的地位を持つ子煩悩な「絵羽」を母に持ち、自身もモラルを重んじ紗音との間に子どもを欲しがっており、彼と結ばれることは極めて難しいです。
紗音がそのことを知るシーンが「うみねこのなく頃に散 Episode8:Twilight of the golden witch6巻」で描かれますが、ぼくは「うみねこのなく頃に」の中でもっとも強い衝撃を受けました。
ちなみに次点で強い衝撃を受けたのは、ナイスバディで描写されることの多かった、紗音の体型が偽物だったことです。
余談ですが、様々な考察や推理では、紗音やベアトリーチェの体型が偽物なのは、「解っていてもはっきりと触れない」という配慮とマナーが重視されていました。
原作では明確な描写は避けているし、Episode7での紗音=クレルの心情描写を知ると触れずにおきたくなりますが、漫画版ではっきりとした描写があった以上、腫れ物扱いは逆に話をややこしくするかなと思いました。
アニメ版での工夫
アニメ版では、演技の影響を考え、紗音役の釘宮理恵さんには真相は伏せ、ベアトリーチェ役の大原さやかさんに真相を全て伝えたのだそうな。
少年のような体型を隠している紗音のこういう台詞や、胸を触ろうとする戦人を拒まないシーンなどには、すっかり騙されました。
ただ、アニメ版の絵コンテには、ベアトリーチェ(そして紗音)の胸の谷間が見える作画を禁じた指示があるなど、作画の中に意外なヒントが隠されていたりします。
上記の戦人に問うベアトリーチェの「私は誰」の答は、
10トンの黄金と、島を吹き飛ばせる900tの時限式の爆弾を持ち、碑文の見立て殺人計画を通して戦人が過去の約束を思い出すことを望む、障害と血縁を隠し穣治と交際する紗音
ということになります。
作画と大原さやかさんの演技の素晴らしさが際立ちます。
真の犯人の性格
紗音=嘉音が犯人と考えると、紗音も嘉音も演じていない素の状態の犯人も存在することになりますが、この人格は漫画版でも詳しくは描かれておらず、基本的には紗音とほぼ同じように描かれています。
しかし、よくよく考えると、嘉音を演じている時点で、紗音そのままの性格はあり得ず、かといってベアトリーチェほど極端な性格とも考えづらく、Episode7のクレルもウィル相手でかなりよそ行きに演じてそうです。
個人的には、「うみねこのなく頃に散 Episode8:Twilight of the golden witch9巻」の終盤で、戦人と対話する時の紗音が、紗音とクレルとベアトリーチェの特徴を併せ持っており、素の犯人の性格であると感じました。
「イナンナの見た夢」『うみねこのなく頃に咲 ~猫箱と夢想の交響曲~』|エンターグラム
もしも紗音が戦人に打ち明けていたのなら
原作では、戦人の罰として、犯人=紗音と戦人が真相について語るシーンはありませんが、「うみねこのなく頃に散 Episode8:Twilight of the golden witch」9巻では、紗音が戦人に真相を打ち明ける描写があります。
ベアトリーチェに扮した安田紗代が戦人と実際に会話し、戦人が声から紗音と気付く流れは、紗音=ベアトリーチェ=安田紗代という犯人像が理解しやすいです。
さらに、安田紗代が戦人を励まし奮い立たせるため、真里亞との魔女遊びで作ったベアトリーチェの口調や性格で接するシーンは、戦人とベアトリーチェの出会いが現実でもあったと感じられ、嬉しかったです。
そして戦人は、真相を打ち明ける安田紗代を理解し許し受け入れ恋人としてさらいます。それでも、飛び込み自殺を選んだ紗代を追いかける展開は、ベアトリーチェと戦人の物語のクライマックスとして最高でした。
白夢の繭-~Ricordando-il-passato~-Lyrics
別Episodeも見直したい
今回、漫画版の描写を参考に、うみねこのなく頃にの Episode1を振り返りましたが、思いのほか面白く、改めて別Episodeも振り返りたいと思いました。
Episode1では、ベアトリーチェが登場しないため、ベアトリーチェを演じる犯人やベアトリーチェ=ヤス=安田紗代に触れられていないのも心残りです。
うみねこのなく頃に咲 ~猫箱と夢想の交響曲~ ダウンロード版
…これポチったら、しばらく帰って来られなくなりそうなのだが。。。
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