四月は君の嘘が面白かったです(ネタバレあり)

評価:
新川直司,吉岡たかを,吉岡たかを
アニプレックス

¥ 3,326

(2015-02-25)

 新川直司による漫画原作アニメ「四月は君の嘘」が面白かったです。
 面白かったといってもラストはとても切なく、しかもそれをさらっと描いているので「どんでん返しなサプライズがあるんでしょ」と余裕をかましてたらそのまま終わってしばらく喪失感で呆然としてましたが(笑
 個人的には前期と今期両方でぶっちぎりに面白いと思っていたタイトルですが、物語全体の面白さよりも、魅力的なキャラクター、メッセージ性、繊細な心理観察とそれを分かりやすく表現している点だったりとピンポイントな面白さが好きだったなあと思います。
 一番泣けたエピソードは有馬公生と母親の関係で、「虐待じみた指導法は自分の死後の公正を思って」みたいな部分…ではなく(いやそこも良かったのですが)、公生がどの出来事の記憶を母親として思い出すかで母親が全く違う人になるっていう部分でした。
 これは故人と向き合い人の死を乗り越えることがテーマであるこの作品での一つの答えかなと思いました。
 好きなシーンというかすごいなあと思ったのが、アニメ版では最終回一話で一気に描いた、タイトルにある「嘘」が重要なキーワードだと分かるところで、本当に上手いなあと思いました。
 宮園かをりがついた嘘って「本当に好きだったのは渡亮太ではなく公生だった」という点だけでなく、メガネをコンタクトにしたとか地味な髪型を変えたとか、引っ込み思案だった自分を積極的な人間として振る舞ったとか、そんな公生と会うために作った宮園かをり全てがある意味嘘だったのかなあと感じました。
 つか、思春期の女の子が突然見せる輝きの裏側を見たようで、かをりが改めて好きになりました。
 作画や演出も素晴らしく、かをりの病状が悪化するにつれて、どんどん悪くなる顔色や張りがなくなっていく髪の毛などは、残酷な所にすげぇ表現力を使うなあと。
 一方で瀬戸紘子の娘小春の顔が物凄く適当(目が黒丸だけ)だったりと、省略されているところは、「漫画っぽく」すごくお気軽に明るく省略されるているのが、重いテーマを見やすくしてくれていたと思います。
 一番の見せ場である演奏シーンのビジュアルだったり、実際に弾いている曲ではないよりイメージにあったアレンジ曲を使うというのはすごく好きな演出でした。
 …公正とかをりの実質的別れを描いたラストの演奏シーンは、もっと分かりやすく泣ける演出の方が良かったという未練はありますが(公正が感じたほどに自分はかをりとの別れが準備出来なかったので)、演奏家を描いた作品としてはとても挑戦的でそして上手くいってると思いました。
 まだまだ書きたいことは山とあるほどに本当に色々なことが詰め込まれた作品(この記事長!w)ですが、それでも全体としてはとても軽やかで楽しく、何よりも観ていて不快なところがなく出来ているって本当にすごいなあと思いました。