法廷遊戯原作を読んでみて(ネタバレあり

 先日、劇場映画版の感想を書いた、「法廷遊戯」で不明部分の確認がてら、原作小説を読んでの補足感想を書きたく思います。

法廷遊戯を観ました(ネタバレアリ | Office NaKao

劇場版で共感できなかった点

 劇場版と漫画版でぼくが一番共感出来なかった点が、結城馨による同害報復の提案に久我清義が最終的に同意する部分でした。
ぼくが法律に関して素人であることもあって、清義は織本美鈴側に着く…馨の提案を無視する方が、自然と感じてしまいました。
特に漫画版(途中までですが)では、馨の提案を無視しても、美鈴と清義は上手く生きていけそうと感じてしまいました。
 何よりも、馨の正論の押しつけや、カメラの前で自殺する自分を美鈴に止めさせる寸劇の企てなどを、不用意で無防備な挑発と感じてしまい、彼の提案に乗ることに抵抗を覚えます。
…ちなみに、劇場版では杉咲花さんの迫真の演技によって、モラルとか馨の提案とか隠蔽の是非以前に、美鈴と一緒に生きるのは恐くて無理となり、馨と美鈴どちらとも関わりたくないって心境になってしまいました。

原作小説で納得

 …身も蓋もない事を言えば、著者である五十嵐律人さんが弁護士として活動されていることを思えば、主人公の清義が罪の隠蔽を選択するという結末はあり得ないです。
 しかしそれ以外にも、原作小説では読者がこの作品に触れることで、多少法的センスやモラルを得て、清義が馨に着くことは妥当と判断出来るようになったという演出を感じました。
作中では、馨が開催していた無辜ゲームこそが、清義と美鈴に法的センスやモラルを伝えるためのものだったと触れられています。
 加えて、現実的な捜査機関に対する隠蔽の難しさなどを清義から説明されれば、自首は妥当なんだあと妙に納得してしまいました。

法の遵守の啓蒙

 かつての美鈴や清義のエピソードでは、法律を悪用することと、そうせざるを得ない境遇が描かれていました。
しかし、馨の父親のエピソードでは、法を悪用することの罪深さやそれによって起こる取り返しのつかない悲劇が描かれます。
 そして、クライマックスでは、法による贖罪が描かれており、清義は有罪になることで贖罪する道を、美鈴は無罪になることで一生罪を背負う道をそれぞれ選ぶという結末に至ったのだと感じました。

 序盤から中盤に描かれる美鈴や清義や馨の父親に関わる法律や社会の荒さと比べ、クライマックスではリアリティある緻密な法律や捜査機関が描かれており、この変化に覚える違和感が作品最大の魅力であると同時に、難解さでもあるかなと思いました。

法廷遊戯 (講談社文庫)