法廷遊戯原作を読んでみて(ネタバレあり

 先日、劇場映画版の感想を書いた、「法廷遊戯」で不明部分の確認がてら、原作小説を読んでの補足感想を書きたく思います。

法廷遊戯を観ました(ネタバレアリ | Office NaKao

劇場版で共感できなかった点

 劇場版と漫画版でぼくが一番共感出来なかった点が、結城馨による同害報復の提案に久我清義が最終的に同意する部分でした。
ぼくが法律に関して素人であることもあって、清義は織本美鈴側に着くのが自然と感じてしまいました。
 …まあ、劇場版では、杉咲花さんの迫真の演技によって美鈴には絶対に着いてはいけないヤバさが表現されていたのですが、特に漫画版などでは美鈴側に着いても清義達は上手くやって行けただろうなという印象を持ってしまいました。
 何よりも、馨の正義の押しつけや不用意で無防備な挑発には、劇場版美鈴以上についていけないモノを感じてしまいました。

原作小説で納得

 …身も蓋もない事を言えば、著者である五十嵐律人さんが弁護士として活動されていることを思えば、主人公の清義が罪の隠蔽を選択するという結末はあり得ないです。
 しかしそれ以外にも、原作小説では読者がこの作品に触れることで、多少法的センスを得て清義が馨に着くことは妥当と判断出来るようになったという演出を感じました。
加えて、現実的な捜査機関に対する隠蔽の難しさなどを清義から説明されれば、自首は妥当なんだあと妙に納得してしまいました。

 それまでに描かれる、美鈴や清義に関わる、法律や社会の荒さと比べ唐突にシリアスな展開になりますが、この違和感がもしかしたら作品最大の魅力であると同時に、難解さでもあるかなと思いました。

法廷遊戯 (講談社文庫)