妖怪アパートの幽雅な日常8巻を読みました

 香月日輪によるライトノベル妖怪アパートの幽雅な日常8巻を読みました。
この巻では妖怪アパートの描写はごく一部で、条東商業高校生徒が強盗人質事件に巻き込まれるエピソードがメインです。
 そんな状況下で主人公の夕士は大切な人たちから恐れられたり気味悪がられることの恐怖から、他人にはない超常の力を出せない葛藤に苦しむもギリギリところで乗り越えますが、それと同時に恐怖に屈してしまった脇役の(失礼な言い方だけど)香川という同級生を描くことで、際どさと失うモノの大きさを描いていたように思います。
 対比と言えば相変わらず、生徒を放任しつつも人情味ある千晶と、博愛精神を持つも空気が読めない青木という二人の教師を、生徒である夕士から見た対比を通して大人のあり方を描いているのですが、作中では夕士の目線のせいか著者の主張なのか、千晶びいきに寄りすぎかなと思います。
 …確かに青木みたいなタイプにもの申したいという気持はぼくにもあるのですが、ぼく自身が彼女よりも年上になっていたり、一見千晶っぽいけど性根までクズな奴を見ていたりで、まあそこまで偏ることでもないかなと思いました。
 ちなみに千晶、青木グループの対立描写辺りから、夕士の身の回りに居るのがいい人で固まってきているのが気になります。
もちろん、作品が進むにつれて信頼出来る仲間が増えていく描写は主人公の成長でもあるのですが、どうも青木グループだけをことさら悪者にしているように感じました。
 偏見を持たずに生きるみたいなことをテーマに始まった作品だけに、この辺りがどうなるかが気になります。