コミックぼくらのが大変面白かったです(ネタバレアリです)

 鬼頭莫宏によるコミック「ぼくらの」が、大変面白かったです。
序盤は子供達の死を覚悟することから自身の人生の終わりを作る様子や大きな力を手に入れた際の選択などを描く事で個人としての人間が、中盤以降は軍隊やマスコミや国家などコミュニティとしての人間が鋭く描かれていたなと思いました。
 さらに「町洋子/マチ」編以降のウシロやコエムシが人間でありながら人間の範疇を越えた責任を全うする姿が非常に印象的でした。
 ほとんどのエピソードが、絶望感ではじまりその中に希望を見いだし喪失感で締めるという演出でしたが、不思議と読んでいて嫌悪感がありませんでした。
たぶん手遅れになってしまった状況で必死に生きる人間を描く事で、読んだ人間にまだ間に合うのなら違う生き方が出来るのではないか?というような優しさのある指摘をしているように感じられたのがその理由だったように思いました。
 素晴らしいのは物語や演出だけでなく、堅くて巨大なメカ同士の戦いの描写に柔らかい線の可愛いキャラクター達や優しい絵と残酷な物語のギャップ、繊細で儚い印象のある絵と喪失感あふれる物語のシンクロが絶妙で本当に素晴らしい作品だったなと思いました。