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又吉直樹による小説「火花」を読みました。
著者がお笑いタレントということから内容と関係のない否定的な意見が出たりしましたが、ぼくはかなり好きな内容だし、この時代に火花(と又吉直樹)が芥川賞受賞というのは非常に見事だったと思いました。
文学は時代に応じて変わることで、一時代限りのものでなく継続しつづけられるのだと思うし、そうやって文学を後世につなげることが重要だと思います。
…火花の受賞によって文学は死んだという意見がありましたが、それはまだ文学が旧態依然のままでも生き残れると思っているのが前提だけど、実際のところ文学には大昔からそんな余裕は無くてどんな時代も常に最新を突っ走っていて、今回の火花の受賞もそれを象徴しているように思います。
内容は、売れない芸人・徳永と先輩芸人・神谷との関係を通して、現代の芸人と昔気質の芸人の生き方を描いています。
お笑いタレントの又吉が著者ということから、お笑い芸人の世界の描写はとてもリアル…なんだろうと思います。
また、若者徳永の心理描写はすばらしく、まさに文学という感じです。
先輩芸人・神谷はどんな業種にも必ずいる、目的(芸)のために無理をしたり無理を強いるのが格好良いというキャラクターですが、お笑い芸人という肩書きからそれが他の業種より許されることから、なんか寓話的な存在だなあと感じさせられました。
そしてそんな二人の関わり方から、今がどんな時代かがなんとなく見えてきて、それが的を射ているように感じるので、今この作品が素晴らしいと思いました。