シャーロック・ホームズの冒険を読みました

 アーサー・コナン・ドイルによる小説「シャーロック・ホームズの冒険」を読みました。
 シャーロック・ホームズといえば、名探偵が登場するミステリーの超定番で、多くの映像化などもされていますが、この本に納められた「唇の捩れた男」など10編の短編を読むとそれまで漠然と感じていた印象と結構違う作品だなあと思いました。
 特に日本のお茶の間などで観られるミステリーの定番とは大きく異なり、それが新鮮と感じると同時に文学として名作だなと感じさせられました。
 ぼくが気に入ったのが、短編ということもあって、犯人が推理をするように挑発するようなこともなく、犯罪計画自体は一つの死角を突いてはいるもののごくシンプルであるという点です。
 その結果ふとしたきっかけで突飛のない悪事を思いついてしまう人間の弱さだったり、他人を傷つけることを考えず悪事を実行してしまう人間への軽蔑が鋭く描かれており、悪事と人間の関係みたいなものを考えさせられます。
 余談ですが、連続殺人モノみたいに犯人があの手この手で色々なトリックを思いつきそれを次々に探偵へぶつけていく作品だと犯人像が「トリックを沢山思いつく人」っていうのがキャラクターの個性になりなんか面白みがないなあと感じます。
 シャーロック・ホームズの冒険に限らずいわゆる名作と言われるミステリーは、その立場の人ならそのトリックを確かに思いつくかもみたいな説得力が楽しみの一つかなと思います。(そういう意味でトリックを沢山思いつく理由に説得力があれば、連続モノも面白いです…まあそれがミステリー作家だからとかミステリー同好会だからとなると若干食傷気味ですが)
 そしてそんな色んな人が色んな風に思いつく悪事をことごとく見破り、罪深さに応じた報復をする(あえて警察には突き出さなかったり、警察に追われる以上の報復を与えることもあります)シャーロック・ホームズがとても魅力的でした。