華氏451度を読みました

 レイ・ブラッドベリによって1953年に書かれたSF小説華氏451度を読みました。
 本の所持や読書が禁じられた架空の社会における人間模様を描いた作品で、本の不法所有が発見された際には、火炎放射器を装備した焚書官と呼ばれる公務員が家ごと焼き払うという過激な世界が舞台です。
 著者は「この作品で描いたのは国家の検閲ではなく、テレビによる文化の破壊」と述べており、作中に「これ一冊で、あらゆる古典を読破したとおなじ、隣人との会話のため、必須の書物」など大衆のために要約された情報の氾濫が描かれています。
 さらにこの法を作ったのは独裁者ではなく、
「政府が命令を下したわけじゃないんだぜ。布告もしなければ、命令もしない。検閲制度があったわけでもない。はじめから、そんな工作はなにひとつしなかった!工業技術の発達、大衆の啓蒙、それに、少数派への強要と、以上の三者を有効につかって、このトリックをやってのけたのだ。」
というものでありとても皮肉な世界です。
 そんな時代が続いたためか大衆はものを考えない存在となっており、物語のクライマックスではその結果が衝撃的に描かれています。
 しかし最大の見所はクライマックスそのものよりも、そこに至予兆の多くが現代の世の中に多く見つかるという点です。
 物語の中にはネットワークによるコミュニケーションやスマートフォンなどとのガジェットは登場しませんが、それでもネットユーザーあるあるみたいなものが物凄く描かれておりとても興味深いです。