her/世界でひとつの彼女 を観ました(ネタバレあるかも)

 スパイク・ジョーンズ監督・脚本による映画「her/世界でひとつの彼女」を観ました。
 人格を持つ最新の人工知能型OSに恋をする男を描いた作品ですが、ラブプラスみたいな恋愛用のアプリケーションだったり、ビジュアルのあるキャラクターアプリケーションに対する恋ではなく、iPhoneのSiriやAndroidのOK Googleのような音声コマンドアプリケーションの受け答えに対する恋を描いている点が面白いなあと思いました。
 また、人工知能型のサマンサの立場から観ると、コミュニケーション能力だけで何処まで恋愛が出来るのか?という部分が面白く、肉体が無い自分のかわりに ポーシャ・ダブルデイ演じる人間の女性イサベラをセオドアとのセックスの相手として誘えてしまうあたり、コミュニケーションの可能性に驚かされました。
 同時に人間同士のコミュニケーションの希薄さだったり拙さが強調されて描かれているのですが単純な「人間とのコミュニケーションが出来ない人がバーチャルに逃げている」という意図ではなく、「コンピュータの方が人間よりも優れたコミュニケーション能力を持っていることが分かってくる」という意図なのかなあと思いました。
そして、コンピュータにとって人間がコミュニケーションの相手として物足りない退屈な存在であるという結論に至ってしまい破局する物語であると考えると皮肉で残酷だなあと思いました。
 ただ、人間同士の恋愛がそうであるように、破局したとしてもそこには愛がありそれは人生を豊かにするものであるというのは丁寧に描かれており、作品としてはとても気持良く見終わることが出来たと思っています。