殺戮にいたる病を読みました(ネタバレあるかも)

 我孫子 武丸によるミステリー小説「殺戮にいたる病」を読みました。
 我孫子 武丸と言えばぼくら世代だと、1994年に発売されたサウンドノベルゲームソフト『かまいたちの夜』のシナリオ担当という印象が強く、彼の小説を読むのはこの「殺戮にいたる病」が初めてでしたが、かまいたちの夜以上に猟奇的でスプラッタな作品でとても面白かったです。
 屍姦に至る異常な精神や死体損壊の生々しい描写と、叙述トリック(文章上の仕掛けによって読者のミスリードを誘う手法)の最高峰と言われるミステリーの両立がこの作品の魅力と思います。
 などと言いつつ、最初に読んだときの印象は、叙述トリックに関しては「そう来たかあ。」くらいで、トリックを見破れるだけの伏線の丁寧さには舌を巻いたけれど、驚愕するという感じではありませんでした。
 ただ改めて読む中で、叙述トリックが成立した前提、家族愛や恋愛感情によって人間が盲目になったり、思い込みで大きな勘違いをしてしまうということを語っており、叙述トリックを見事に決められた後に、改めて読み返すとそのテーマが浮かび上がるというのは見事だなあと思いました。