終物語(下)読みました(ネタバレあるかも)

評価:
西尾 維新,VOFAN
講談社

¥ 1,620

(2014-04-02)

 西尾維新によるライトノベル作品、化物語シリーズ17作目 終物語(下)が面白かったです。
今回は「まよいヘル」「ひたぎランデブー」「おうぎダーク」の3話が収録されていますが、基本的には忍野扇を巡る物語の完結を描いた一繋がりのエピソードです。
  時系列的には暦物語の後、臥煙伊豆湖に心渡切りつけられた直後から物語が始まり、阿良々木暦の卒業式で終わり、「くらやみ」と「忍野扇」のエピソードは完全に終わり、あまり信用出来ない「あとがき」でも事実上の最終巻とのことです。
 で、全体の感想としては、物語シリーズのラストに相応しい面白さでした。
 物語シリーズは序盤は雑談で焦らし、終盤では気前よく要約したかのようなストレートな文章で、メインテーマや伏線回収を一気にスピーディにたたき込むというスタイルですが今回も健在でした。
 また、物語の終盤で、久しぶりに「犯人当」的なシチュエーションが発生しますが、ここはフーダニット(誰が犯人か?)にこだわるより、ホワイダニット(動機)を一気に読む方が楽しいかなあと思います。
…流石に17作目のグランドフィナーレとなると、ミステリーなラストは許されない仕方無い部分かなと思いました。
 今回の表紙が誰なのか?に関しても注目するとちょっと面白いです。…って分かる人は一目瞭然なのかなあ?ぼくは上記の「犯人当」のタイミングくらいまでは気づけませんでした。
 一方で、阿良々木暦を描いてきた物語のラストとしては、彼のあり方を通して描きたかった何かしらが集約されていたように思います。
特に、傷物語の「瀕死の(美女)吸血鬼を救うために命を投げ出す」という阿良々木暦のまあいわゆる男のダメな部分を深く掘り下げて、結局それもありみたいに締めてくれたのはシリーズのファンとして嬉しかったです。
 ネタバレなのですが、セカンドシーズン以降、お気楽ハーレムストーリーになっていたのを、凄惨な怪異譚として締めくくるかのような展開だったのはちゃんと達成感とありがたみのあるハッピーエンドな物語になっています。
…この辺は戯言シリーズと似た感じかも。
 また、恋物語でフェイントして以降、めっきり描かれる頻度が減った、戦場ヶ原ひたぎと阿良々木暦の物語も久しぶりに描かれています。
個人的には、今回のエピソードこそ、恋物語というタイトルで描かれて欲しかったなあと思うのですが、このあたりはむしろ西尾維新の読者さばきの上手さと褒めた方が良いのかなあ。
 あとがきを信じるなら、「続・終物語」は可愛らしく出版とのことだったので、後日譚を描いているのかなあと思いますが、引き続き楽しみにしています。