ミステリー散る

 ビブリア古書堂の事件手帖のドラマ(こっちの感想は後日改めて)でミステリーに憧れた人がミステリーごっこをするシーンがあり、小学校の頃に学校で流行ったミステリーごっこを思い出しました。
 クラスのアホグループ数名にミステリー小説が流行り、それを真似て遊ぼうと始まったもので、しょせんは小学生、友達の持ち物を隠して隠し場所を示すヒントになる文章を残すみたいな雑なものでした。
いつも一緒にいる仲の良い者同士の中に被害者と犯人が居るので、だいたい「犯人はお前しかあり得ない」とばれるし、犯行現場の目撃者の表情がバレバレで、ごっこ遊びとしてまったく成立してませんでした。
 ところがそんなある日、本気のミステリーが起こりました。
ごっこ遊びに一番はまっていた友人の持ち物が盗まれて、「教室に隠してある。探してみろ。」みたいなメッセージが置かれていたのですが、犯人が全く分からないし目撃者も居ない。
 ミステリー好きだった子供達が一転して大パニックになりその話は先生に伝わり、クラス全員を集めた大裁判(?)となりました。
定番の、彼の持ち物を盗んだ者が名乗り出るまで帰れないよという担任教師の言葉に、話せば面白いけどあまり前に出ないってキャラの女子が泣きながら名乗り出て、隠していた持ち物(給食袋かなんかだったと思う)を引っ張り出して持ち主に投げ返しました。
 その隠し場所が秀逸で、持ち主が身の回りの整理が苦手な奴でゴミ溜になっていた個人ロッカーの奥にビニール袋に包まれて詰め込まれていました。
 改めて考えるとミステリーごっことして取り組めばなかなか面白いことになっていたのに無粋なことをしてしまったし、ミステリー好きのクラスメイトのために仕組んだ犯人の女の子は無念だっただろうなあと同情します。
いやはや、あの大裁判の場で「想像してみてください」だったり「あぁ駄目だぜ、全然駄目だ。」という言葉で推理をはじめられる名探偵になれなかった事が悔やまれます。
 ちなみにミステリーを心がこもった知的な遊びとして守るために先回りし続けるのが「ビブリア古書堂の事件手帖」の妙で、現実世界に持ち出そうとしたミステリーという妄想の花が散るのを愛でるのが「うみねこのなく頃に」の妙なのかなあと思いました。