宮崎駿監督作「君たちはどう生きるか」観てきました

 7月14日より公開された、スタジオジブリ最新作の映画「君たちはどう生きるか」を、初日の初回をグランドシネマサンシャインのIMAXレーザーGT版で観てきました。
 平日の午前中ながら席は八割ほど埋まっており、上映終了後には拍手も起こり、お祭り気分を味わえました。

スタジオジブリ最新作「君たちはどう生きるか」は本日公開! 10年ぶりの宮崎駿氏による長編作品 予告などが一切ないまま公開日を迎える

善し悪しは考察待ち、娯楽的な面白さ楽しさは乏しい

 意味深な描写や演出が多数ありましたが、はっきり解る部分は少なく、作品の善し悪しについては、元ネタや文学的なお作法等も加味した考察などを楽しみに待っています。
 脚本・映像ともに娯楽的な面白さは乏しく、ファンタジー部分も現実の比喩が溢れた精神世界っぽい演出のため、風刺的皮肉が強く不気味で暗く楽しさが少なく、展開も遅く退屈でした。
 登場人物やキャラクターも感情移入がしづらく、気軽に楽しむにはハードルの高い作品と感じました。
宮崎駿監督作品で、格好良い、可愛いと感じるキャラクターが少ない(居ない)のは初めてでした。
 何か表現したいものがあるとは思いますが、子連れの家族で楽しめるタイトルではないと感じました。

好きなところ

 分かりやすい楽しさを控えた印象が強く、退屈と感じる時間が長いですが、最終的にはごり押しながら非常に分かりやすく解決しており、難解さはなく納得できる良い話であったと感じています。
同時にメッセージかテーマか、何かをじっくり伝えたいという意図も見えて、ずっと考えていられる奥深さもありそうで、そこは今後の楽しみにしています。
 また、演出や作画などで一瞬で感動し泣けるようなシーンでの馬力は流石と驚かされました。
 現実世界の比喩と感じるいくつかのシーンでは、「監督はそんな風に思っていたのか」と痛快さを覚えました。

他のジブリ作品と比較すると

 「君たちはどう生きるか」を他のジブリ作品と比較すると、色んな意味で宮崎吾朗監督作品「ゲド戦記」と似たものを感じました。
特に話回しが難しくて息苦しい状況が続くあたりはゲド戦記を思い出しましたが、耐えきって結末まで押し切る宮崎駿監督の強かさを感じました。
 宮崎駿監督の別作品で例えるのは難しいですが「千と千尋の神隠し」や「ハウルの動く城」終盤の辻褄の怪しい感じがずっと続いて、最後に「もののけ姫」のゴールに着いたという印象です。

高畑勲監督作品を意識してそう

 宮崎駿監督作品と考えると違和感が強いですが、「母をたずねて三千里」や「アルプスの少女ハイジ」といった、高畑勲監督作品の方向を目指していると考えると色々腑に落ちます。
宮崎駿監督の良さとぶつかる部分も多く、そもそも高畑勲演出が苦手なので良いとは感じませんでしたが、宮崎駿監督の高畑勲監督に対するリスペクトと対抗意識が激しく見えました。
…そして、宮崎駿さんが同じ土俵に立ってみると、改めて高畑勲さんの凄さに気付かされました。

お勧め具合

 かなり毛色が違いハードルも高いので、いつもの宮崎駿監督作品を期待して見に行くとしんどいと思います。
一方で、宮崎駿監督作品の意外な一面が見られるという意味ではお勧めです。
 …テレビに向かない内容のため将来的に金曜ロードショーなどでもあまり放送されそうになく、今のうちに観るという意味では、凄くお勧めです。

 また、繰り返しになりますが、ぼくが鈍くて気づけていない点も多そうで、鋭い考察によって「なるほど!」と作品の印象ががらっと変わる可能性もあると感じています。