僕とおじいちゃんと魔法の塔の1~5巻を読みました

 香月日輪による小説、僕とおじいちゃんと魔法の塔の1~5巻を、風邪で寝込んでいる間一気に読みました。
世間常識と異なる価値基準を持ってしまった人間の気持ちを代弁しつつ、自由な生き方の比喩や物語の必然性としてファンタジーを埋め込んだ構成で、ぼくは世間常識の歪さに無頓着な「良い子」を批判する部分が好きです。
 香月日輪の作品は、妖怪アパートの幽雅な日常も好きでよく読んでいるのですがこちらと共通する点も多く、異端であることの解決法として、魔法の塔だったり妖怪アパートという異端であることが矯正されないで済む場所があり、そこに異端児が集まりそれぞれが独自の個性を発揮していくあたりは強く重なっていると思いました。
 作中の言葉に「孤独を愛せ」と出てくるのですが、実際には非常に賑やかに楽しくリア充に変わり者たちが過ごす描写が多く、意図的に良い変わり者と悪い一般人というキャラクターに絞って描いている点に関しては個人的には好きではありません。
 もちろんこの作品は児童文学というジャンルであり、学校や家族という一部の場所や期間での常識に浮いた子が、社会というより多様な常識が認められる場には個性と常識を兼ね備えて合流できるというのが一つのテーマだと考えれば、妥当だなと思います。
 キャラクターは主人公の陣内 龍神が好きです。
物語の主人公としては珍しくシニカルで毒舌なキャラクターで、なんかちょっとぼくとキャラクターが似ているかもと思いました。
 神様のようにおよそ何でも出来る魔女であるエスペロスも好きです。
登場人物たちが万能である彼女にどのくらい甘えるか…と考えるとかなり中途半端に感じるのですが、目線を彼女に置き換えると面白いです。
 根本的には自分が助けているから成り立っているプロジェクトの中で自分なら簡単にできることでも相手が望まなければ助けないことで、相手の達成感を高めたり成長を促したりしつつ、彼女自身が新たな発見や成長をするという描写は深いなあと思いました。