廃墟建築士読みました

 三崎 亜記による短編集廃墟建築士を読みました。
この作品のポイントは「馬鹿馬鹿しいこと」が、コミュニティ内での同意を得ることで「重要なこと」になってしまう点と、重要なことに人間がどういう意味づけと関わり方をして、さらにそれがコミュニティや個人にどんな影響を与えるのか?という点だと思いました。
 たとえば廃墟建築士では廃墟が建築芸術として世界的に価値があるものとされた世界で、廃墟に芸術作品に対するようなうんちくが語られ、相反する思想を批判したり、人生を賭けた創作活動をしようとする人間が描かれますが…いやでもただの廃墟でしょ…みたいな滑稽さがあるかなと。
 七階闘争では、都市全てにある建築物の七階を無くすという(多くの人が馬鹿馬鹿しいと感じる)行政の決定に対する反抗闘争が描かれているのですが、反抗勢力側の主張は行政以上に馬鹿馬鹿しいものの、主人公が気にしている女性が参加していることで感情移入してしまう…みたいな要素も加わっており、意味づけの仰々しさと根拠の単純さがポイントだと思いました。
などと面白い着眼点だとは思いますが全体的には嫌いな作風で、知的さや傲慢さよりもどこかバカを相手にしているんだからという油断みたいなものが目立って、本一冊を小馬鹿にしながら読み続けるのはイヤだなあと感じてしまいました。