北大路魯山人の「フグを食わぬ非常識」が面白いです

 北大路魯山人による「フグを食わぬ非常識」を、例によって電子書籍ストア BookLive!の青空文庫(無料)で読みましたが、魯山人のらしくない必死さがあってとても面白かったです。
 誰しも、相手に信用をされているという自信が無いときは、如何に自分が信用に足る人間かを、野暮ったいほどにアピールしてかえって怪しくなるものですが、あの魯山人でさえ著書でフグ食を勧めるにはそういう怪しさがでてしまうようです。
 曰く、「今日わたしほど美食に体験を持っている人間は世間にほとんどない。~中略~ふぐは絶味も絶味、他の何物にも処を異にすると断言してはばからないのである。」
 魯山人ほどの人が自らの美食をアピールする必死さは、それだけでとても面白い読み物だと思いました。
 もっとも、著書の初出は1935(昭和10)年ということですが、ふぐ食は1882年に「河豚食う者は拘置科料に処する」とした項目を含む違警罪即決令を発布、1888年に山口県下ではふぐ食が解禁、1949年に日本初のふぐ調理師試験開始という事情なので、初出当時はまだまだ危険という印象があり、その説得は本当に必死だったのだと思われます。