アニメ映画「コクリコ坂から」を観ました

評価:

スタジオジブリ

¥ 3,509

(2012-06-20)

 高橋千鶴(作画)・佐山哲郎(原作)によるマンガ原作のスタジオジブリによるアニメ「コクリコ坂から」を観ました。
 観ていて思わず自宅の部屋を掃除したくなる生活美や、安定感ある作画など流石ジブリだなあと改めて思いました。
 ちょっと分かりにくいかなあと思う点があったので、その辺に触れつつネタバレありで感想を書きたいと思います。


 まあぼくのネタバレの前に下記が、コクリコ坂からを非常に深く考察しているので是非読んで下さい。
●「コクリコ坂から」の世界を考察する
 あらすじの人間関係部分を雑に言うと、主人公「松崎海」と「風間俊」惹かれあうけれど、実は兄妹だという事がわかりお互いしょんぼり。でもよくよく調べたら兄妹ではなかったのです。やったね☆…みたいな感じ。
その他の事件としては、文化部部室棟「カルチェラタン」取り壊しを、掃除したり直談判したりして中止させる。…本当に雑でスミマセン。
 それを非常に軽快にテンポ良く描いている。で、ぼくはこのメロドラマのような安直なあらすじとテンポの良さこそがこの作品最大の魅力だと感じました。
 で、そう考えると、NHKで映画製作裏側を取り扱ったドキュメンタリー『ふたり『コクリコ坂・父と子の300日戦争~宮崎駿×宮崎吾朗~』とか、宮崎駿によるポスターとか、鈴木敏夫さんのプロデュースが裏目に出ている感じ。
 もっと適当で前向きで明るい物語だと思いました。
…もちろん、戦後動乱期に起こった影の部分、例えば死んだ親友の子供のために戸籍をでっち上げなくてはならなかったとかカメラに向かって笑わないとかが、この作品に奥行きを作っているのは分かるのですが、そのせいで分かりにくくなっているなあと思いました。
 この分かりにくさの放置は最近のジブリ作品の大きな問題だと感じます。
ぼくが一番モヤモヤしたのが、海が俊に見せて俊の家にもあった、小野寺、澤村、立花が写った写真。
海の父親が海の姓である「松崎」ではなく「澤村」だったり、俊の父親である「風間」がその写真を持っていたりする紛らわしさから、誰が誰かが分かりにくい。
 …俊の育ての父親「風間」が3人の内の一人って思っちゃうと、最後に小野寺とあうシーンで「なんか一人多いけどどうなんだっけ?」とよく分からなくなってしまいます。
 海は俊が立花の子供ではなく海の父親が不貞で作ったのを偽ったのではないか?と母親に聞いてしまい、母親も言葉だけを追うと「そうかもねえ」みたいなノリなのでとにかくややこしいです。
…上記考察サイトでその辺りがすぱっと説明されているので是非ご覧下さい。
 ちなみに文化部部室棟「カルチェラタン」のエピソードが、原作になかったというのにはビックリ。
そうだったらちょっとなあと思ったのが、あの「カルチェラタン」に出てくる、昔のオタク描写。これが佐山哲郎さんによるものかジブリによるものかの違いは大きいと思います。
 おそらくぼくのひねくれでしょうが、昔はオタクももっと堂々としていて、コミュニティに対して発言権を持っていて、女子との交流も活発だったぜ…みたいなのが、個人クリエイターか、上がりを決めた世界的制作会社が語るかはえらい違いがあると思います。
 社会的地位のないオタクであるぼくとしては、オタクの大親分のオタクに対する言い回しは気になるところなのです。
 などと、モンスター消費者よろしくあれこれケチをつけましたが、全体としてとても面白い作品でした。